徒然なか話

誰も聞いてくれないおやじのしょうもない話

無縁墓と「卒都婆小町」

2022-07-11 20:39:22 | 伝統芸能
 今日は早朝から家内と盆の墓掃除とお参りに行った。立田山西麓のわが家の墓は三方を無縁墓に囲まれている。それらの墓石には6年前の熊本地震で倒れたままのものやあらぬ方向を向いてしまったままのものもある。掃除はほとんどがその無縁墓からわが家の墓地に侵入してくる雑草の刈り取りだ。特に葛は繁茂力が強いので始末が悪い。おそらくこれからこのように放置された無縁墓が増えて行くのだろう。

 そんな無縁墓を眺めていたら、ふと能「卒都婆小町」を思い出した。これまで2回、NHKの「古典芸能への招待」で見た。一度は友枝昭世さん、もう一度は観世清和さんがシテだった。そのあらすじは

――高野山での修行を終えた二人の僧が摂津国で一人の老女に出会う。その老女はあろうことか、卒塔婆(墓標)に腰掛けて休んでいた。僧はこれを見とがめ、立退かせようと説教を始めるが、禅問答よろしく老女に言い負かされる。実はこの老女こそ、かつて美貌と才女の誉れ高い小野小町の老残の姿であった。小町は華やかな昔に引きかえ今の零落ぶりを語っていたが…――

 この歳になると、人生の栄枯盛衰の物語が、わが人生と照らし合わせながら妙に心に響く。


能「卒都婆小町」(一部)