
そんな無縁墓を眺めていたら、ふと能「卒都婆小町」を思い出した。これまで2回、NHKの「古典芸能への招待」で見た。一度は友枝昭世さん、もう一度は観世清和さんがシテだった。そのあらすじは
――高野山での修行を終えた二人の僧が摂津国で一人の老女に出会う。その老女はあろうことか、卒塔婆(墓標)に腰掛けて休んでいた。僧はこれを見とがめ、立退かせようと説教を始めるが、禅問答よろしく老女に言い負かされる。実はこの老女こそ、かつて美貌と才女の誉れ高い小野小町の老残の姿であった。小町は華やかな昔に引きかえ今の零落ぶりを語っていたが…――
この歳になると、人生の栄枯盛衰の物語が、わが人生と照らし合わせながら妙に心に響く。
能「卒都婆小町」(一部)