明後日は大正から昭和初期にかけて天才少女詩人と謳われた海達公子の生誕107年に当たる日。わが母の高瀬高女の6年先輩になる。2017年に他界された規工川佑輔先生の「評伝 海達公子」に感動し、先生がたまたま僕が熊大附中を卒業する時、入れ替わりに赴任された先生だったこともあり、お願いして初めてお会いしたのは15年ほど前だった。以来、先生の玉名のご自宅を訪問したり、海達公子関連の行事にご一緒したりして先生の研究成果を聞くのが楽しみだった。そんなある日「評伝 海達公子」のテレビドラマ化に挑戦してみませんかと僕が持ちかけ、先生も過去に実際ラジオドラマ化の話があったそうで乗り気になられた。手始めに静止画を使ったショートムービーを試作し、松田真美さんのナマのナレーションで試写会をやったりした。そして脚本づくりに当っては玉名、荒尾そして徳島までロケハンに出かけ、いよいよ本格的な脚本づくりに取り掛かったのだが、頼りにしていた公子の高女時代の親友でもあった規工川先生の伯母さまが亡くなられ、そして規工川先生ご自身も帰らぬ人となられ、この計画は断念せざるを得なかった。
下記は、未完成の脚本の一部で、児童文芸誌「赤い鳥」誌上で北原白秋の指導を受けていた公子が初めて白秋と対面する場面である。
--------------------------------------------------------------------------------------------------------
昭和三年七月 大牟田駅
駅舎の中に十人ほどの人が列車の到着を待っている。白い背広姿の与田(準一)と海達父娘が改札口のまん前に立っている。濛々と黒煙を吐き出しながら列車が入って来る。改札口にほど近いデッキから、男の子が小さな女の子の手を引いて降りてくる。北原白秋の長男隆太郎と長女篁子である。すぐ後ろから鞄を提げた白秋と妻菊子が続いて降りてくる。白秋はカンカン帽の下に涼しげな笑みを浮かべている。カメラのフラッシュが炊かれる。改札口に近付いた白秋が先乗りしていた書生の与田に気づく。白秋一家が改札口を出た時、与田がすっと近付き、白秋の鞄を受け取る。
与 田「お疲れ様でございました。奥様もお疲れになったでしょう!」
白 秋「おぅ、ご苦労!」
与田は、横にいる海達父娘を紹介しようとする。すると新聞記者らしい男たちが三人、
ずかずかと白秋の前に進む。
記 者「北原先生!お帰りなさいませ!今回のご滞在はいつまで・・・」
白 秋「どうもどうも、ちょっと待ってくれたまえ。」
と軽く手を上げて記者を制した後、すぐに視線を海達父娘の方に向ける。
白 秋「やあ、やっと会えたね!」
松 一「お初にお目にかかります!いつもご指導を賜り感謝いたし・・・」
白秋が言葉をさえぎるように
白 秋「堅苦しいことは・・・。」
と言いながら、再び記者たちの方に視線を向け
白 秋「この子、私の弟子なんだよ!」
記 者「あゝ、そうでしたか。」
白秋を中心とした集団がぞろぞろと駅舎の外に向かって歩き出す。
駅舎の前には二台のセダンが待っている。

左から北原白秋、与田準一、海達公子
下記は、未完成の脚本の一部で、児童文芸誌「赤い鳥」誌上で北原白秋の指導を受けていた公子が初めて白秋と対面する場面である。
--------------------------------------------------------------------------------------------------------
昭和三年七月 大牟田駅
駅舎の中に十人ほどの人が列車の到着を待っている。白い背広姿の与田(準一)と海達父娘が改札口のまん前に立っている。濛々と黒煙を吐き出しながら列車が入って来る。改札口にほど近いデッキから、男の子が小さな女の子の手を引いて降りてくる。北原白秋の長男隆太郎と長女篁子である。すぐ後ろから鞄を提げた白秋と妻菊子が続いて降りてくる。白秋はカンカン帽の下に涼しげな笑みを浮かべている。カメラのフラッシュが炊かれる。改札口に近付いた白秋が先乗りしていた書生の与田に気づく。白秋一家が改札口を出た時、与田がすっと近付き、白秋の鞄を受け取る。
与 田「お疲れ様でございました。奥様もお疲れになったでしょう!」
白 秋「おぅ、ご苦労!」
与田は、横にいる海達父娘を紹介しようとする。すると新聞記者らしい男たちが三人、
ずかずかと白秋の前に進む。
記 者「北原先生!お帰りなさいませ!今回のご滞在はいつまで・・・」
白 秋「どうもどうも、ちょっと待ってくれたまえ。」
と軽く手を上げて記者を制した後、すぐに視線を海達父娘の方に向ける。
白 秋「やあ、やっと会えたね!」
松 一「お初にお目にかかります!いつもご指導を賜り感謝いたし・・・」
白秋が言葉をさえぎるように
白 秋「堅苦しいことは・・・。」
と言いながら、再び記者たちの方に視線を向け
白 秋「この子、私の弟子なんだよ!」
記 者「あゝ、そうでしたか。」
白秋を中心とした集団がぞろぞろと駅舎の外に向かって歩き出す。
駅舎の前には二台のセダンが待っている。



左から北原白秋、与田準一、海達公子
書こうと思い、筆をとっても、一行も詩なるものをものすることができません。
北原白秋氏は詩人としてすばらしい成功を収められました。彼に見出された方も優れた才能をお持ちだったのです。
前にも言いましたが、こちらには野口氏の旧家が今も保存されています。彼は白秋氏と親交があったらしいですね。思いは通じるものです。たまたま五月の連休に北茨城を訪ねますと、雨情記念館があり、玄関先にシャボン玉を飛ばすのか、ストローを口にした男女の子どもの銅像がありました。あっ、ここが雨情氏のふるさとなんだ、と感激したことです。