木の上に住む子どもたち/オクスフォード 世界の民話と伝説10 アフリカ編/講談社/1978年改訂
「木の上に住む子どもたち」はグリム「オオカミと七ひきの子ヤギ」と同じような話。
男一人で子育てをしているお父さん。アフリカの話らしく、けだものや魔法使いを心配して、木の上に小屋をたてて、登りおりように縄梯子をつけます。
ここに、自分のために働かせようと魔法使いがやってきます。
子どもたちは、魔法使いにさらわれ、奴隷にされてしまいます。しかし、お父さんがやってきて無事に救われます。
グリムでは、オオカミがチョークを食べて声をかえ、子ヤギのところにきますが、「木の上に住む子どもたち」では、魔法使いがアカアリ、クロアリ、サソリに舌をかませ、舌がおおきくはれあがって、一か月たつと、お父さんの声と同じになると大分手が込んでいます。
「オオカミと七ひきの子ヤギ」を聞いた方が、チョークの効用はずっと続いたのか疑問をていしていましたが、「子どもたち」のほうは、しわがれ声で子どもと会話しますから、はれがおさまったら、もとにもどったようです。
「子ヤギ」は、オオカミに飲み込まれてしまいますが、「子どもたち」のほうは、こき使われます。
魔法使いは、お父さんの矢で心臓をうちぬかれますが、いまわのきわに「わしが死んだら、小指を切って、火にくべなさい。そうすれば、わしの殺したものがみんな生きかえってくる。」と言い残します。
そのとおりにすると、ウシやらヤギやらヒツジやら、おまけに人間までもがつぎつぎとでてきます。
この魔法使い、最後に素敵なものをプレゼントしてくれる、ずいぶんさばけた存在。
かたや動物、かたや人間、かたやお父さんとかたやお母さんと対照的です。子どもは三人登場します。