ハイリブの石 モンゴル民話集/松田忠徳・訳/富士書院/1988年初版
相撲をテーマにした「ねずみのすもう」は、掛け声が楽しくいつも楽しめる昔話ですが、相撲がでてくるのは意外にすくないようです。
モンゴル相撲の話が、この「バリーンのりきし」です。
モンゴルバリーン地方のひつじつかいのおばあさんのひとり息子。
小さいころから大の相撲好きで、ひとりで相撲をして遊んでいた息子は、やがてお祭りのとき腕比べの大会で優勝をし、バリーンのりきしとよなれるようになります。
このバリーンの力士は三年続けて優勝するのですが、ウジュムチンのとのさまのの50歳の誕生日のおいわいに派遣され、なにがなんでも相撲大会で優勝するよう厳命されます。
ウジュムチンのとのさまは、大分汚い手をつかいますが、バリーンの力士はここでも優勝します。
ウジュムチンのとのさまは、さらに難題をだします。
けたはずれに大きな赤い猛牛をつれてこいというのですが・・・
ここもなんとか切り抜けたバリーンのりきしでしたが、今度は二頭ののらくだが突進してきます。
ここもきりぬけるのですが、ウジュムチンのとのさまは、百人の鉄砲隊をだして、バリーンのりきしをうちころしてしまいます。
一方、バリーンのとのさまは、おかかえりきしが、殺されたことをしっても、たかがひつじついかいひとりぐらいで、ウジュムチンのとのさまとけんかするのはわりにあわないと、うやむやに。
権力者の面子のためだけに利用された少し悲しい話です。しかしモンゴルの草原に、今も語りつたえられているのは、こうした権力者への批判が横たわっているようです。
モンゴル相撲は、土俵の俵がなく、ひじから先とひざから下は地面についても良いといいます。
試合時間も長く、専用のシャツを着て行うようです。
この話の中に、手の甲につけるチョトゲ、かわぐつがでてきます。
手が地面についてもいいため、はたきを気にしなくてもよい、突っ張りはないというのも特徴のようです。
日本の相撲が国際化するのはうれしいのですが、ひさしく日本人力士の優勝がないというのはさびしいところ。
国技というのにとらわれず、いっそもっと国際化して全世界にひろめたらとも思う。