魔法の学校 エンデのメルヘェン集/池内紀他訳/岩波書店/1996年初版
単純なことも、国がからむとなかなかうまくいかないというのは昔も今も共通しているようで、小さな小さな国でも同じよう。
ある高い山の右にある王国と、左にある王国。
右王の軍隊は、兵隊四人、隊長が五人、将軍が三人。
左王の軍隊は、兵隊が三人、隊長が四人、船のない海軍大将がひとり。
敵をやっつけるために出発したのには、深ーい深ーいわけがありました。
同じ時期に、二つの王国に子どもがうまれました。王子とお姫さまです。
赤ちゃんの洗礼式の日に、よばれなかった遠い遠い親戚の魔女がいて、よばれなかった腹いせに、魔女がプレゼントしたのは右の国にはスープ鉢、左の国にはスプーンでした。スプーンでスプーン鉢をかきまぜると、スープ鉢にはいままでのんだことのないような、おいしくて栄養満点のスープがあふれて、いくらのんでもちっともへらないというものでした。
一組でないと効果はありません。魔女は、片方がどこにあるかいいませんでしたから、せっかくプレゼントされたのもうまくいかせません。
洗礼は同じ日におこなわれましたから、魔女は分身の術をつかって両方の国の洗礼にでたのでしょう。
何年かたって、王子と姫は、お城にいるのが退屈になって、高い山にのぼって顔をあわせます。
気の合った二人は、スープ鉢とスプーンのことを知って、この二つをあわせれば、それでいいのよと話し合います。
こどもから一方のありかをしった右王と左王は、それから互いに、もう一方を手に入れようとあれこれ画策します。
買い取りを実行してもうまくいかず、交換をもちかけたり、お互いに泥棒の名人をつかって盗んでみたり。
両方の国が、同じことを考えるので、泥棒が盗み出しても、スプーン鉢とスプーンが入れ替わるだけでした。
こうして、軍隊をつかって力ずくで、相手の国のものを奪いとろうとします。
軍隊が途中ではちあうことはありませんでした。なぜかっていうと高い山の右側と左側をとおったのです。
両方の軍隊は相手のお城に火をつけ、おきさきを捕虜にしてしまいます。
右も左も城がなくなったばかりか、食べ物もなくなります。
たたかいがおこなわれているとき、スプーン鉢とスプーンをもちだしたのは、王子と姫で、山の上で二人はスプーンをスープ鉢にいれて、そろそろかきまぜると、そこには栄養たっぷりのスープがあふれて、ふたりは、これいじょういらないというほどスープをたらふくのみます。
両方の国がおなじような不幸にみまわれたことで、やがて二つの国は会議をすることになりますが・・・。
小さな小さな国同士が意思疎通することが困難なら、大きな国どうしでは、もっともっと大変。
両方の国の会議というのは、王さまとおきさきさまだけなのです。
面白いのですが、語るためには長すぎるようです。