キバラカと魔法の馬/さくまゆみこ:編・訳 太田大八・画/冨山房/1979年
「二千年の三倍くらいも遠い遠い昔の話」と、いかにも昔話らしいはじまり。
サルタンのガダという美しい娘に恋したリマンという舟商人。
サルタンから「娘と結婚したいものは、すばらしい贈り物をしなければならない」というので、リマンは自分のもっていた舟も土地も売って、全財産を贈り物にかえますが、サルタンは結婚させてくれません。
がっかりしたリマンは遠いよその国に行って住もうと思いましたが、おばあさんから、かぶると姿がみえなくなる古いおんぼろのぼうしをもらい、せめてだましとられた贈り物を取り戻そうと、再びサルタンの屋敷にでかけます。
姿がみえなくなるので、なんなくガダのいる部屋にいくことができますが、不思議なぼうしのことを聞いたガダから眠り薬をのまされ、屋敷の外にほうりだされてしまいます。もちろんぼうしも取り上げられてしまいます。
しかし、おばあさんから、ほしいだけのお金がザクザクとでてくる財布をもらって、また、ガダのところへでかけます。番人はお金で買収?しましたから、今度も簡単にガダにあうことができます。
ここでもガダから眠り薬をのまされ、財布も取り上げられてしまいます。
すぐに秘密をしゃべってしまうリマン。ガダはほめじょうず。
こういうことが続くと、昔話では必ず三度目があります。
三度目におばあさんからもらったのは杖。杖がでてくると、だました相手を殴るかと思いきや、すこし違います。
この杖は、自分の身でも他人の身でも好きなところへ動かすことのできる杖です。
ここでも杖を取り上げられてしまい、おまけに杖のせいで、リマンは無人島においやられてしまいます。
無人島では、不思議なことにきがつきます。食べるものがないのでナツメヤシを食べるとリマンの頭にツノが生えます。希望を失ったリマンが、おなかがすいてもういちどナツメヤシを食べると、ツノはスルスルとひっこんでしまいます。
こうなると結論はみえているのですが、問題が一つ。つまり、この無人島からどうやって脱出するかです。ここでシンドバッドの冒険よろしく、巨大な鳥の羽にしのびこんで、島を脱出しますが、今度は鳥からどうやって地上におりるかです。
鳥にしがみついた手をはなすと、藁屋根の上に落ちますが、なんとか命はとりとめます。
それからサルタン一家の全員にツノがはえることになりますが、ガダとの関係はどうなったでしょうか。
リマンさん、このあと、とてつもない魔法のぼうしとさいふと杖をどうしたのでしょう。ちゃんと取り戻しています。
チャドの昔話というのは、はじめてですが、チャド共和国は、アフリカ中央部の国家。スーダン、中央アフリカ、カメルーン、ナイジェリア、ニジェール、リビアと国境を接しています。
人口は2012年で1200万人、1960年にフランスより独立とありました。