いまに語りつぐ日本民話集5/笑い話・世間話/野村純一・松谷みよ子・監修/作品社/2002年
あまりかしこくない父親と二人の息子の会話。
十五夜は月のはじめにあるという兄。月の終わりにあるという弟。
父親の教えは、十五夜というのは、ある月も、ないつきもある。
下の息子が「海の水は、あんなに沢山、川から流れて行っても余らねえのだべ」と聞くと
父親「海の水が余らないのは、魚が沢山いて、のんでしまうからだ」
下の息子の疑問は素直です。確かにいくら水が流れ込んでも、海の水は増えません。子どもからきかれたらうまくこたえられるか、自信がなくなりました。
王さまになった羊飼い/松瀬 七織・再話 イヨンギョン・絵/福音館書店/2018年
タイトル通り、羊飼いが2羽のカラスが王子の病気の原因と治し方を話しているのを耳にして、そのとおりにすると王子の病気がなおり、国の半分をもらって王さまになるというチベットの昔話。
では羊飼いがどうして動物の言葉がわかるようになったのかは、こんなわけがありました。
天涯孤独の貧しい羊飼いが、草原で出会ったうさぎに自分のツアンパ(はだか麦をいって粉にしたもの。お茶やバターをいれてこねてたべる)をわけてあげ、それを百日続けたとき、うさぎは白い髪、白いひげ、白い服のおじいさんに変わり、お礼に動物の言葉がわかる力を授けてくれます。
このおじいさんは天の神で、悪魔とのたたかい負けてうさぎのかえられていたのですが、ツアンパを百日食べさせてもらえば、もとにもどることになっていたのです。
そして、まったく話相手のいない羊飼いが、さみしさから、宝物より動物の言葉がわかる力をもとめたのも幸せにつながっていきます。
正月用に殺されようとした母羊と子羊をつれて、地主の家から逃げ出す もうひとつエピソードがあります。こうした展開だと羊の恩返しがあってもおかしくありませんが、ここでは、旅に出るという昔話のパターンにつながるだけです。
天の神が悪魔に負けるというのは、ほかの話には、あまり見られません。