ウルスリのすず/作:ゼリーナ・ヘンツ・文 アロイス・カリジェ・絵 大塚 勇三・訳/岩波書店/2018年
自分の物語を絵にしてほしいと頼まれた作者が、数年かけて村に通い絵本が誕生したと作者紹介にありました。
絵本の誕生もさまざまです。
舞台はスイスの小さな貧しい村。
村には鈴行列というお祭りがあります。冬をおいだし、春をむかえるため、子どもたちが鈴をもって、はれやかな裏声をひびかせて、村中の井戸や牛小屋をまわります。
みんなは、そのおかえしに木の実や肉や、おかしなどを鈴いっぱいにいれてくれるのです。
行列は鈴の大きい順。ところが行列の後方では、小さな鈴をもった子たちが、冷たい雪のなかで、がたがたふるえ、それからなんにももらえずに、家にかえらなければないませんでした。
ウルスリがかんがえたのは、夏の山小屋にあった大きな鈴。
踏み外したら谷底におっこちそうなせまい橋をわたり、くつが雪の中にうまりながらも、一足一足すすんでいきます。
ウルスリは、とりにえさをやり、牛には水をやり、朝早く牛小屋のそうじをする働き者。
おかあさんはヒツジの毛からウルスリの服や帽子をつくってくれます。
おとうさんは、くつに鋲をうってくれるし、しょちゅういろんなものをつくってくれます。
一晩家にかえってこないウルスリをまちながら、木ぼりの牛もつくる存在です。
一晩山小屋にとまったウルスリを心配した両親でしたが、かえってくると、おこることなく、ぐっとだきしめます。
春をまつよろこび、家族のあたたかい関係が、ストーリーをふくらませてくれています。
村の風景や人物が、とても素朴な感じで、アルプスの雰囲気がつたわってきます。