ゼラルダと人喰い鬼/トミー・ウンゲラー;作・絵 田村 隆一 麻生 九美・訳/評論社/1977年
どなたかがウンゲラーが亡くなったことについてふれられていたので、この絵本を借りてきました。亡くなられたのは、この2月9日。
トミー・ウンゲラー(1931年11月28日 – 2019年2月9日)は、フランスの方で、1998年に国際アンデルセン賞画家賞も受賞されています。
トミー・ウンゲラーの絵本は日本で20冊以上出版されていますが、読んだものは「すてきな三にんぐみ」「オットー ― 戦火をくぐったテディベア」の2冊のみ。
ひとりぼっちの人喰い鬼は、朝ごはんに子どもを食べるのが大好き。
毎日やってくる人食い鬼をおそれ、町の人々は、子どもをかくしてしまいます。学校もからっぽで先生はやることがなくなってしまいます。
子どもがすっかり姿を消したので、人食い鬼はなまぬるいキャベツ、つめたいジャガイモで我慢しなくてはならずいらいら。
一方、町からとおくはなれていた谷間の森の開拓地に住むひとりのお百姓が、ひとり娘のゼラルダとくらしていました。
一年に一度お百姓さんは、農場の作物を売りに町にいっていましたが、体調をくずし、かわりにゼラルダが市場にでかけました。
人食い鬼はゼラルダのにおいをかぎつけ、あとは岩から、とびかかるだけでしたが、あんまりあせって道のまんなかにどしーんと落ちて、気絶してのびてしまいます。
町から遠くはなれた開拓地に住んでいたゼラルダは、人食い鬼の怖さも知らず、近くの小川から水をくんできて、気絶した人食い鬼の顔をふいてやります。
人食い鬼がはらぺこだとうめきをあげたので、ゼラルダは人食い鬼がおなかがぺこぺこで死にそうなんだと思っって、料理にかかります。
ゼラルダは料理が大好きで、六つになるまでに、煮たり焼いたりあげたり蒸したりできました。
作物を売りに出かけたので材料は豊富。できあがったのは、オランダガラシのクリーム・スープ、マスのんせいケイバーそえ、カタツムリのニンニク・バター漬け、トリとブタの丸焼き。
すっかり元気になった人食い鬼は、生まれてはじめての料理の味に、食べたかった子どものことはすっかり忘れてしまいます。
そして、ゼラルダは、城で料理をつくってくれさえしたら、たっぷり黄金をあげるという人食い鬼のさそいにのって、お城にむかいます。お父さんも城にやってきて、この辺で最高の材料を調達です。
ゼラルダは、はじめての材料でためしたり、ぜいたくにまぜあわせたり、次々と新しい料理法をあみだし、作って作って作りまくります。
また、宴会をひらいて、近くの人食い鬼をもてなします。おいしい料理を食べた鬼は、子どもを食べることなんてしっかり忘れ、ゼラルダから料理もまなびます。
それから何年かたって、美しい女性になったゼラルダは、髭をそった人食い鬼と結婚し、子どもをたくさんうむのですが・・・。
ストーリーは、人食い鬼も改心して めでたしめでたしなのですが、絵には大分しかけがります。
最初のページでは、子どもが檻に入れられ、血のついたナイフを持つ人食い鬼。
こどもをかくまうため穴を掘るおばあさん。
ゼラルダが料理本をよんでいるそばで、黒猫がのぞき、そのしっぽがミルクカップにはいっているのは?
トリとブタの丸焼き、おいしそうではあるのですが、妙にリアルです。
最後のぺージで、幸せそうな家族の子どもが一人が背中にナイフとフォークを持って食べようとしているのですが、これは?