ぼくはワニのクロッカス/作・ロジャー・デュボアザン 訳・今江 祥智 島 式子/童話館出版/1995年
ワニといえば歯がキザキザで、こわもて。
古いかしの木にすんでいたワニのクロッカスは、みんなとなかよくやっていけると思っていましたが、みつかると銃でドカンとやられると、小さくなってくらしていました。
あひるのバーサは、ワニに同情して、お百姓のスイートピーさんのところにつれていきます。
ところが、スイートピーさんのところの馬や牛、ぶた、にわとり、やぎは大騒ぎ、イヌのココも声がかれるほどほえたてました。
でも、あひるのバーサのとりなしで、みんなと仲間としてやっていくことに。
いつかスイートピーさんにもわかってもらえると、みんなで藁でベッドを作り、バーサは食べるものをはこびました。
スイートピーさんや奥さんが納屋にやってくるときは、すばやくクロッカスを、干し草の中にかくしました。
ところが、おくさんが納屋にリンゴをとりにきたとき、クロッカスは見つかってしまいます。
「ワ、ワ、ワニ!」奥さんは、金切り声をあげると一目散にかけだし、すぐにスイートピーさんに報告。スイートピーさんも納屋へと急ぎます。
その前に、イヌのココがみつけた納屋の下の板をはずして、クロッカスをかくします。
なんとか、その場をすごしますが、クロッカスは奥さんを驚かしたことにさびしくなりました。
しかし、バーサから奥さんが花が好きなことをきいて、大好きという気持ちを伝えるため、夜明け前に野の草と真っ白いひなぎくの花束をつくってポーチの小さなテーブルにそっとおいておきます。
テーブルの花束をみて、奥さんはおおよろこび。でも誰かわかりません。
クロッカスは、それからも しだにとりまぜて むらさきいろの花束、きいろい花束、紫色の花束を小さなテーブルにはこびます。。
奥さんは、毎日花束とのであいが たのしみになります。でも、だれが?
次の日、まだ暗いうちからポーチのどあにかくれて ようすをうかがっていました。
花束がワニのものだと知った奥さんは、「なんて こころやさしいワニ くんだろう」と花束のお礼を いいました。
それからは花壇の手入れは、奥さん、クロッカス、バーサのしごとになりました。
やさしい動物やお花もたくさん出てきて、とても楽しそうな一家でした。
クロッカス、スイートピーはいずれも花の名前。
後半の展開をみると、名前が花の名前だったことに、うまく結びついていました。
落ち着いた色合いの絵も趣があって素敵でした。