うたうカメレオン/世界むかし話 アフリカ/掛川恭子・訳 レオ&ダイアン・デイロン 松枝 張・絵/ポプラ社/1979年
・くいしんぼうのアナンシ
昔、クモのアナンシは、体のどこをとっても細いところはありませんでした。
今のようになったわけとは?
働くことが大嫌いだったアナンシでしたが、この地方のしきたりでは、家にやってきた人には食事をださなければなりませんでした。
あるとき、二つの村でにぎやかなお祭りがありました。お祭りに行けばごちそうが食べられるのですが、同じ日にお祭りがあるのでどちらにいこうか迷います。
どちらの村のほうが、ごちそうがいっぱいあるかわかりません。両方の村のごちそうを食べることができるれば一番です。
そこでアナンシは息子を東と西の村にやって、ごちそうができあがったら、綱を引っ張るようにいいます。綱は自分の胴にまきつけてありました。
息子が引っ張ってくれた村にいくことにしたアナンシ。ところが両方の村で、ごちそうができあがったのは同時でした。
東からも西からも同時に引っ張られたので、綱がアナンシのからだにきつくくいこんでいき、胴が細くなってしまいます。
・アナンシと漁師
アナンシが、人一倍よく働く漁師のところにいって、仕事をてつだわさせてくれと頼みます。働く気などぜんぜんないないアナンシの目論見は、働かずにほしいだけ魚を手にいれようと思ったのです。
漁師の提案で、順番に働くことにした二人。
まずわなはアナンシがつくり、漁師は休むことに。
わなをかける段になって、漁師がわなをしかけようとすると、どうしても魚を手に入れたいアナンシは、わなもかけます。
わなにかかった魚をあつめようとすると、今度も魚を食べようと思ったアナンシが集めます。
漁師が眠っているうちに魚をごまかそうとしたアナンシでしたが、漁師がじっと見ているので、ごまかすことができません。
次に魚を市場にもっていくことになりますが、これもアナンシ。
ところが、市場で魚を買いにき人たちは、漁師のほうにお金をはらいます。魚は漁師がとるものと、きまっていたからです。
漁師はアナンシの目論見をちゃんと知っていて、逆手にとったのでした。
この漁師、なかなかの人で、ちゃんと小銭を四こ、アナンシにわたします。でもこのお金、ほんのわずかだったようですよ。
・よくばりアナンシ
クモのアナンシ、妻と二人の息子に頼んで、お棺のなかにすりばち、すりこぎ、さら、さじを入れてもらい、自分はお棺のなかに。
アナンシ、あたりが暗くなるとお棺からはいだして、畑の作物の一番おいしそうなものを食べます。
何回かそんなことがあったので、妻と二人の息子は、やわらかなゴムで人形をつくり、畑にたたせます。
夜、いつものようにお棺から出てきたアナンシが作物を食べようとして、人形にきがつきます。
声をかけても返事に腹を立てたアナンシが、手でゴム人形を思いっきりたたくと、手がゴム人形にくっついてしまいます。足でけると今度は、足が人形にくっついてしまいます。
さらに頭突きを食らわせると、頭もくっついてしまいます。
妻と二人の息子に見つかってしまったアナンシ。酋長のさばきをうけるため、村につれていかれますが、村の人びとは、ゴムでべとべとになったアナンシをながめて、笑ったり、はやし立てたり。
アナンシははずかしくて、ずきんで頭をかくし、すきをみつけて逃げ出します。そして、近くの家に逃げ込みますが、その日から、友だちと顔をあわせたがらなくなります。
アナンシ、妻と息子がいるにもかかわらず、自分だけおいしい作物を食べようとするのは、やりすぎです。
この「よくばりアナンシ」が絵本になっていました。
くものアナンシとねばねばにんぎょう/マイケル・ポク:再話・絵 おいかわ ゆり・訳/福武書店/1990年
マイケル・ボクさんはガーナのかた。親から子へ、子から孫へと語りつがれた話の一つと紹介されています。
「よくばりアナンシ」よりは、すっきりしていて、畑の持ち主が、畑のものがなくなっていくのに、きがついて、ゴムの木のしるでねばねば人形を畑においておきます。
そうとは知らないアナンシが、いつものように畑からだまってちょうだいしたものを、頭にのせてかえるとき、ねばねば人形にきがつき、あいさつしますが、なんの反応もないので、おこって手でほっぺたをたたくと手が、人形をけとばすと足が人形にくっついてしまいます。
畑の持ち主に見つかったアナンシは、小さくなって木の上の自分の巣にかくれてしまいます。
アナンシは人間そっくりに描かれています。といってもクモですから足は四本、手も四本です。
畑になっているのは、ココヤム、ペペ、プランテインと、ほとんどしらないものばかり。
絵本らしいのは、最後に、木に糸をかけたクモが大きく描かれていることです。
・アナンシの帽子ふりおどり(赤鬼エテイン/愛蔵版おはなしのろうそく8/東京子ども図書館・編)
ガーナのお話。昔はクモにもちゃんと髪の毛がはえていましたが、どうしてなくなったか。
人一倍大食いのクモのアナンシが、おかみさんの母親がなくなって、葬式に出かける前に、ゆっくりと腰をすえて、腹いっぱいたべてからでかけます。
葬式では、いかに悲しんでいるかをしめすため、なにものどがとおらないと、食べ物をすすめられてもことわります。
みんなは食べても、「家内の母親が死んで、まだ三日しかたってないんだぞ。どうしてのんだり食ったりできるかね」と、やせ我慢。
四日目、アナンシが家にひとりきりになったとき、鍋でぐつぐつ煮えていた豆をみるともうがまんできません。しゃもじで豆をすくったとき、みんながもどってきます。アナンシは、大急ぎで豆を帽子の中に入れ、その帽子を頭にのせます。
ここでも「食べなきゃ」とすすめられますが、ことわります。
ところが頭に豆がベッタリくっつき、その暑さで頭がヒリヒリ。アナンシは両手で帽子をつかみきざみに揺り動かしました。ようすをみていたみんなに「帽子ふり祭り」を思い出したと話すアナンシ。でも豆がますます熱くなってきて・・・。
虚栄心というのも考えものです。アナンシの話は、いずれもアナンシにとってはちょっと悲しいラストで、憎めません。