どんぴんからりん

昔話、絵本、創作は主に短編の内容を紹介しています。やればやるほど森に迷い込む感じです。(2012.10から)

ふるいせんろのかたすみで

2019年08月20日 | 絵本(外国)

    ふるいせんろのかたすみで/チャールズ・キーピング・作 ふしみ みさを・訳/ロクリン社/2017年初版

 

 いまではつかわれなくなった線路のそばに、6軒の家がならぶ長屋がありありました。そこにすんでいるのは 年をとった まずしい人ばかり。

 線路長屋の人たちは、毎週10ペンスだしあって、サッカーくじを買うことにしていました。

 このくじが ある日、大当たり。25万ドルでした。

 突然手にした大金に、線路長屋の人たちは、どうしたでしょうか?

 お金がはいる前とお金がはいったあとの人物の描き方がたくみです。

 世界中のごちそうの つくりかたを切り抜いていた アダおばさんは、かべに はった料理を かたっぱしから つくり、ぜんぶ たいらげたので、すっかり ふとってしまいました。

 すてきな服や宝石が、夢だったケチケチおばさんは、つぎつぎに 服を買っていきました。

 ゲバラ?の写真をはっていたウイリアムおじさんは、「チャンスがあれば わしが 世界を かえてやるんだがのう」といっていましたが、ぴたりと 世の中を かえたいといわなくなり、ともだちと 賭け事にでかけることに いそがしくなります。

 大金が手にはいったとき、残り少なくなった人生を、どうすごすか? いろいろ考えさせられます。

 ささやかな望みをかなえた人、お金で変わってしまった人、社会貢献する人と、さまざま。

 その人の本当の地がでてくるかもしれません。 (お金には縁がありませんから、心配は無用かな(笑))

 原著は1974年、日本で1983年「たそがれえきのひとびと」(らくだ出版)として出版され、2017年に新装新訳とありました。どちらのタイトルでも、内容を想像するのは困難ですが、久しぶりに読み応え、見ごたえのある絵本でした。

 6家族で25万ドル、一家族で4万ドルといえば、それほど大金ではなさそうですが、40年以上前というのを考えると、いまでは相当な額かも。

 人生が刻み込まれた人物の絵が魅力的で、レンガ造りの長屋も見ごたえがあります。

 小学校だと どうかなとも思いましたが、高学年の読み聞かせでは、集中して聴いてくれたようです。