やまのバス/文・内田鱗太郎 絵・村田エミコ/佼成出版社/2009年
病院帰りのおばあさんたったひとりのバスが、終点につくと、運転手の山田さんは、峠から山の村をながめていました。山田さんが25年間かよいつづけた道でした。
それも今日で最後。バスは廃線になります。
山田さんは、なみだで かすんでいく 山に、ふとつぶやいていました「だれでもいいから、のってくれたら、 バスは なくならないのになぁ」
つぶやきは、風にのってクヌギの森や、湖のほとりまで運ばれていきます。
「だれでもいいから・・・ だれでもいいから・・・」
すると、めったに 人のいない、バス停に イノシシの親子が たっていました。
はじめはびっくりした山田さんですが「お客は だれでもいいんでしょう」といわれ、次の停留所でクマ、キツネの親子も のせます。
イノシシのお代はヤマイモ、クマのお代は、ニジマスとミツバチの巣、キツネのお代は、柿とクリ。
まちのてまえ停留所で動物たちは、山田さんをみおくります。
山の幸をみたバス会社の社長さん、市長さんはバスツアーを企画し おくやまいきのバスは今日も走っています。
モノトーンの木版画ですが、柿、栗、キノコ、ヤマイモ、ニジマスには、色がついています。
紅葉やバス乗客のほっぺの色合いが、楽しそうです。
それにしても山道に手すりがゆれるレトロなバスです。
ラストが甘いようにも思いますが、経済性ばかり追求される世の中、まだまだ残していきたいものがたくさんあります。