おばあさんの馬/瀬戸内寂聴・文 小林豊・絵/講談社/2007年
瀬戸内寂聴さんと小林豊さんとのコラボ。小林さんの落ち着いた色合いがこの絵本にぴったりです。
寂聴さんが絵本の文というので、はじめ不思議に思いましたが、インドの「ジャータカ」物語がもとになっているので納得しました。
夫も息子もよく働いて、商売は繁盛し、お金持ちだったおばあさんに不幸が重なります。
夫が旅先で事故で無くなり、二人の息子も病気で亡くなってしまいます。
それでも、仏さまを信じているおばあさんは、仏さまの教えを実践し、貧しい人、体が不自由な人たちなどをみると、食べ物も着るものも、なんでもおしげなくあげました。
そのうち、お金もなくなり、おばあさんに残ったのは、大きな家だけ。
ある日、馬商人から馬を泊めてくれるようにいわれ、馬をとめてあげたおばあさん。
馬商人の商売がうまくいき、宿代を払おうとした馬商人でしたが、おばあさんは家に泊めた馬にうまれた子馬をお礼にもらいます。
おばあさんは、馬にリタという息子の名前をつけ、子馬のからだをあらってあげたり、食べ物を作ったりして、毎日楽しくくらします。子馬は、草原や広い川原を自由に駆け回り立派になります。
3年後、あの馬商人がやってきて立派な馬を見てびっくりします。高い値段で売らしてほしいと商人はいいますが、おばあさんは「売るなんてとんでもない。リタはわたしの子ども、わたしの 命だからね。」と、きっぱりことわります。
あまりにも見事なリタをみた王さまは、どんな宝石、宝物をだしてもいいといい、何重にも鍵をかけられた馬小屋にいれ、何十人もの見張りの番人をたてますが、リタは、そこをぬけだし、おばあさんのもとへかえります。
おばあさんからリタをひきはなすことはできないとおもった王さまは、おばあさんとリタを城にひきとります。
この絵本に、でてくる人々は、いい人ばかり。馬商人も王さまも横やりをいれることはありません。
「自分よりかなしい人や不幸なひとに、やさしくして、なぐさめる」境地には、なかなかなれませんが、精神だけは、もちたいものです。そして、おばあさんのように前向きに生きるということでしょうか。
紙芝居にもなっています。