パンはころころ ロシアのものがたり/マーシャ・ブラウン・作絵 八木田 宜子・訳/冨山房/1996年新装版
ロシアのこの話は、いろいろな再話がありますが、マーシャ・ブラウンというので借りてきました。
お爺さんがお婆さんにパンを作ってと頼みますが粉がないというお婆さん。こねばちの底、粉箱の底の粉をかき集めて、出来上がったパンが、ころころ逃げ出します。
パンは、のうさぎ、おおかみ、ひぐまから逃げ出し、きつねからも逃げようとするのですが・・・
パンが逃げ出すときの歌は、そのまま読んでも面白くないので即興で歌うのが楽しそうです。
昔話の特徴の、繰り返しが楽しい話です。
裏表紙には、おじいさん、おばあさん、のうさぎ、おおかみ、ひぐまが、パンを追いかけていて、表表紙には、 きつねが木のそばで、みんなをながめています。
ころりんパン/Y・ワスネツォフ・絵 北畑静子・訳/大日本図書/1990年
マーシャ・ブラウンのものと同様ですが、パンが逃げ出すときの歌が楽しい。
ぼくは ころころ ころりんパン
こなおきば さらっと はいて
こなばこ ちょいと ひっかいて
あつめた こなで できたんだ
サワークリームで こねられて
こんがり あぶらで あげられて
まどべに おかれて さまされた
でも ぼくは にげだした
・・・
おだんごぱん/せた ていじ・訳 わきた かず・え/福音館書店/1966年
絵は茶色中心でやや地味な感じがします。
おだんごぱんが、歌を歌いながら、うさぎ、おおかみ、くまから逃げ出すのは同じですが、「おまえなんかに つかまるかい」と、小憎らしい。
きつねには、「すばらしいうただね」と、ほめられ、その気になったおだんごぱんが、べろのうえまでのっちゃったのが、まちがいでした。
表紙では、おじいさん、おばあさん、うさぎ、おおかみ、きつねがのぞきこんでいます。おじいさん、おばあさんがおだんごぱんをおいかけるどころか、ながめているのは?
パンケーキのおはなし/岸田 衿子・作 とうまゆか・絵/ひかりのくに/2002年
同じような話ですが、こちらは逃げ出すのがパンケーキです。
パンケーキが焼けた瞬間、七人の子ども、おかあさん、おばあさん、てくてくおとこ、めんどり、おんどり、あひる、がちょう・・・から逃げ出します。
最後はブタです。
しょうがパンぼうや/ポール・ガルドン・作 多田 裕美・訳/ほるぷ出版/1976年
子どもがいないおじいさん、おばあさんはが焼いたしょうがパン。
焼きあがったしょうがパンのぼうやは逃げ出してしまいます。
おばあさん、おじいさん、牛、馬、お百姓さん、牛飼いさんから逃げながら、どんどん走りますが、最後はきつねです。
・ホットケーキ(ノルウエーの昔話/愛蔵版おはなしのろうそく/東京子ども図書館・編
絵本にもなっている「ホットケーキ」(絵本は”ころころ・パンケーキ”というタイトル)ですが、おはなし会で語られているのは、”おはなしのろうそく”版が多いようです。
お母さんが七人の子ども達のために焼いたホットケーキが、ころころ逃げていきます。
男の人に食べられそうになり、メンドリ、オンドリ、アヒル、ガチョウ、カモからもうまく逃げますが
最後のブタに「ガブッ、ゴクゴクッ!」。
大好きなのは出だしの部分。
ホットケーキを食べたくて食べたくて、子どもがお母さんにホットケーキをねだる場面。
「ねえ、わたしのだいすきなおかあさん」
「ねえ、やさしくて、だいすきなおかあさん」
「ねえ、きれいで、やさしくて、だいすきなおかあさん」
「ねえ、親切で、きれいで、やさしくて、だいすきなおかあさん」
「ねえ、頭がよくて、親切で、きれいで、やさしくて、だいすきなおかあさん」
「ねえ、世界でいちばん頭がよくて、親切で、きれいで、やさしくて、だいすきなおかあさん」
ほめことばが段々エスカレートいくさまがなんともいえません。
「おはなしのろうそく」は、松岡享子さんの訳ですが、「パンケーキ」というタイトルで岩波少年文庫の佐藤俊彦さんの訳があります。こんな感じです。
「おかみさんや、年とったおとうさんや、七人の子どもたちや、おじさんや、メンドリや、オンドリや、アヒルや、ガチョウからも、にげてきた」(佐藤訳)
「ぼくは、おとうさんからも、おかあさんからも、七人のハラペコぼうずからも、オジサンポジサンからも、メンドリペンドリからも、オンドリゴンドリからも、アヒルガービルからも、ガッチョブッチョウからも逃げ出したんだ」(松岡訳)
松岡さんの訳は、なんともリズムがある訳です。
・かたやきパン(イギリスとアイルランドの昔話 石井桃子:編訳 福音館文庫)
イギリスの昔話です。かたやきパンがにげだすのは、女の子、男の子、井戸掘り二人、溝堀ふたり、クマ、オオカミ。最後はキツネに食べられてしまいます。
・クッキーぼうや(ブリッグズの世界名作童話集1 3びきの子ぶた/バージニア・ハヴイランド編 レイモンド・ブリッグズ・絵 小林忠夫・訳/篠崎書林1988年)
おじいさんとおばあさんの二人暮らし。子どもがほしくてクッキーをつくり、皿に乗せ、かまどにかけますが、クッキーぼうやは、家を逃げ出します。
ウシ、ウマ、麦打ちしている人、麦刈りをしている人から食べられそうになりますが、次にあったのはキツネ。
川のそばにきて、クッキーぼうやは、キツネのしっぽにのり、背中にのり、鼻にのって渡ろうとするのですが、「パクッ!」。
「ぼくの四分の一がなくなった」
「おやっ、こんどははんぶんになっちゃった」
「こりゃー、たいへんだぁー、そのまたはんぶんになっちゃった」
それからクッキーぼうやは、もうなんにもいわなくなります。
最後は、クッキーがだんだんなくなる感じがよくでています。最後の印象がいいと、それだけで、ずっと後まで記憶に残ります。