盗まれた月/和田誠/岩崎書店/2017年(1963年復刻版)
楽しませていただいていた和田誠さんが亡くなられたというニュースがながれていました。今後新しい作品がみれないという実感がわきません。しかし多くの絵本などを残してくれていることに感謝です。
「ぬすまれた月」は和田さんが20代のころ、1963年に発行されています。
それから54年たって、製本、用紙、文字、色味、等、なるべく当時の風合いを再現して復刊したものとありました。
ある男が夜空から月をぬすみ、毎日変わる形を見て楽しんでいましたが、ある日、泥棒にぬすまれてしまいます。泥棒が箱をあけてみると、箱はからっぽ。泥棒は箱をすててしまいます。
じつは、新月で月はみえなかったのです。
このあたりから、満月、日食、月食と月、地球、太陽の関係がわかりやすく説明されています。
それから月の誕生や潮の満ち引きも。
ここからすてられた月の続きがはじまります。泥棒が捨てた箱をみつけたのはひとりの女の人。三日月だったので、女の人は、竪琴をこしらえました。素敵な音、歌で、女の人と音楽は大評判。 ところが演奏旅行に船に乗ると、竪琴はすっかりだめになっていて、女の人はヒステリーをおこして海に投げ込んでしまいます。
月が再び出てきたのは魚の中。二つの国の二つの船が同時にいっぴきのさかなをつりあげ、公平をきすため半分にきったときのことでした。
二つの国はお互いに自分のものと主張しあいますが、とりあえず、ふたつの国のまんなかにおかれ、兵隊が相手をみはっていました。いつ戦争になるかわからない状況。
ここで子どもたちが相談して、とっときの方法を考えます。月を気球にのせ、小鳥に空に返すようにおねがいしたのでした。
それにしても一ページ一ページの厚さ。いつもみている絵本の三倍ほどの厚さでしょうか。
古来から人間が見上げてきた月。さまざまな空想がありました。さまざまな物語を紡いできました。科学で解明していくのもありでしょうが、すこし夢ものこしてほしいと願うところです。