子どもに贈る昔ばなし19/小澤俊夫・監修/小澤昔ばなし研究所/2023年
又ぜえさんという、とんちのある人が寿命にはかてず、閻魔さまのところへいきました。
閻魔さまから「お前は生きているあいだ、何をしてきたのか」と聞かれ、「百姓でございましたが、魚をとることが大好きでした。一番うまいのは、鯰のかばやきでした。」と、又ぜえさんは答えました。こんなにうまいものはないというので、閻魔さまも鯰をとろうとします。
漁には、とくさ着をきていくようにいわれ、閻魔さまは、又ぜえと着物を取り換え、三途の川へ。とれるのなんの、鯰はいくらでも取れ、かば焼きにして食べたら、うまかったので、極楽へやってよいぞと、おもった閻魔さま。
ところが、いざ着物を着換えるだんになって、又ぜえさんは、「わしは閻魔大王ぞ。うそばかりいうやつは地獄いきだ」と、閻魔さまを地獄におくってしまいます。
さあ、それからは、筑前の者はみんな極楽。あんまり極楽行が多いので、蓮の葉のざぶとんがたりなくなり、後から来た人は、蓮の葉に似ている、かいもの葉にすわることになりました。一方、地獄にはだれもこなくなったので、大きな釜がいらなくなって、古物屋に売ってしまいました。そして、その空き地を耕して、そばを植え、そば粥もちが食べられるようになり、今では、地獄がいいという話。