ホレおばさん/脚本・松谷みよ子 画・二俣英五郎/童心社/1997年(16場面)
原作ドイツの民話とありますが、グリムと違いはありません。
働き者の娘と、なまけ者の娘がでてきますが、働き者の娘はまま娘ですから、よくある昔話のパターンです。
家の仕事を全部やっていた働き者のまま娘が、糸巻を井戸に落とし、母親から言われて井戸のなかにとびこみます。
気がつくと、まま娘は見渡す限り花が咲き乱れる草原にいました。歩いていくうちに、パン焼きかまどから、焦げそうになっているパンをとりだしてやり、木をゆさぶり熟したリンゴをおとしてあげます。
ホレばあさんの家の仕事を、いわれたとおりきちんとやり、ホレばあさんからいわれたように、羽ぶとんをいつも力いっぱいふるいます。
やがて、家に帰りたくなった娘は、ホレおばさんから井戸に落とした糸巻をかえしてもらい、からだじゅうに金をくっつけ、家へ帰ります。
母親は、同じような幸運を手を入れさせたいと、実娘もホレおばさんのところへ行かせます。 しかし、なまけ者の実娘は、パンもリンゴのお願いも無視します。ホレおばさんの家では、一日目は一生懸命働きますが、二日目以降はちゃんと仕事をしないばかりか、羽ぶとんも、ふるうこともしません。実娘が家に帰ろうとすると、娘のからだにはコールタール(この紙芝居では泥)がくっつき、一生の間、どうやってもとれることはありませんでした。
タイトルですが「ホレのおばさん」「ホレおばさん」「ホレおばあさん」としているものがあり微妙な違いがあります。語感からいうと”おばさん”より”おばあさん”の方が年長の感じ。”の”がはいると、ホレというのは地名をあらわしているようにも見えます。
この物語のもとになったドイツのヘッセン地方では、寝床を直すときに、ふるった布団からつめものの羽が飛ぶ様子が雪に似ていることから、雪が降ることを「ホレおばさんが寝床を直している」というようですから、この地方に由来する話です。羽ぶとんをふるうというのはほかの昔話にはみられません。
この紙芝居では、ホレばあさんは、きばのような おおきな 歯が生えています。
昔話の 器量よしで働き者、醜くて怠け者という対比の仕方は、わかりやすいのですが、今日的な視点で見ると、あまりにも単純化されすぎて どうにもなじめません。