青葉の家

2014-07-31 23:48:08 | 住宅の仕事

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オノ・デザイン建築設計事務所のホームページを更新し、仙台に建つ住宅「青葉の家」の写真をアップしました。
ぜひご覧ください!!リンクはこちらから。
http://www.ono-design.jp/aoba.html

僕の事務所での設計では、家の内と外を印象的につなぎながら、居心地の良いコーナーをつくっていくことを大切にしています。そんなことから、「ドリフト・プラン」と呼んでいるジグザグ型の間取りが特徴になっています。「青葉の家」は、ドリフト・プランを大きく展開した住宅になりました。

室内のそれぞれの窓からは、それぞれ異なった印象に見えるように庭造りをしています。荒く造られたコンクリート平板敷きのテラスから、庭へのつながりも印象的なものになりました。

これまで、室内に色はあまり使わなかったのですが、トイレや子供部屋など、いくつかのスペースの壁を彩色しました。

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できあがった住宅の写真は、すべて僕自身が撮りました。小雨の降る日に、写真を撮りに伺うと、庭もしっとりとした雰囲気で、じんわりと居心地の良い雰囲気がありました。そういう雰囲気がいいなあと思いながら、歩き回ったり座ったりしながら写真を撮りました。そんな時間がとても好きです。もともとカタルニア・ロマネスクの写真を見たのが建築を志したきっかけですから、シャープで現代的な建物よりも、気配や雰囲気といったものを丁寧につくりこんでいく方が、性に合っているようです。

写真もセルフなのに加え、ホームページも手作り。これも、なるべく思うニュアンスのみを伝えたいという思いからそうしているのですが、なにかと不具合も伴いがちです。ホームページがうまく更新画面に切り替わらない場合もあるようですので、そのような場合はページの再読み込みをしていただけますと幸いです。

ホームページを更新しなかった期間に、いくつかの住宅ができあがりました。どの住宅も、内と外のつながりの気持ちよい空間になるように心がけて設計したものですが、それぞれに独自の特徴も生まれました。それらの空間も、準備ができたものから少しずつホームページやブログにアップしていきたいと思います。

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はじめての作品

2013-09-03 23:21:47 | 住宅の仕事

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埼玉県川口市で住宅を設計中で、法令手続きのために川口駅周辺の庁舎を訪れました。その際に川口駅前の広場に立ち寄りました。なつかしい、小さなオブジェに会うために。

もう10年近く前になりますが、僕が独立して設計事務所を構え、さあ、仕事をはじめよう、でも何をしよう・・・というような状況のとき、ひょんなことからデザインコンペに応募することになりました。川口駅前の広場に、時計塔モニュメントをつくるので、そのデザイン案を募集するとのこと。まずはこのコンペを楽しんでやってみよう!ということで応募した案を採用していただき、現実につくられることになりました。自分の力ではじめて得た仕事。とても嬉しかったのを覚えています。

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結果的にはいろいろな理由から、当初思い描いたカタチからはだいぶ離れて実現しましたが、鋳物を活かしたデザインはそのまま実現することができました。それからしばらくの間、なかなか訪れることがなかったのですが、ようやく「再会」することができました。

雨風にうたれ、塗装もはがれ気味ですが、その分、年季がはいった感じになっていました。かつての自分に出会うような、妙な感覚がありました。

さて、そんな思い出の街で進めている住宅は、大きな屋根のある家。ほとんどが平屋で一部が2階建てになっています。大きな屋根というよりも、深い軒のある家、と呼びたくなるような。そんな懐の深い雰囲気が出ればいいと思います。

敷地にあった大きなケヤキを使って、家のなかのあらゆる家具をオリジナルに作ります。そのメインは大きなダイニングテーブル。それらが格調高く感じられるような空間を、素材とプロポーションを吟味してつくりあげたいと思います。

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ブリコラージュの街

2013-07-14 00:08:56 | 住宅の仕事

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陶芸家のご夫婦のアトリエ住居を設計することになり、打合せが始まりました。現在のアトリエの様子を見学に、愛知県の瀬戸を訪れました。

街の中には今も煙突がいくつも立ち、街の中に埋め込まれるようにして、多くの陶芸作家のアトリエが現役で活動している様子でした。古い製陶工場や倉庫を改修して使い続けているものも多くあり、風土のなかに、陶芸の文化が深く浸み込んでいるようないるような印象を受けました。

街全体が、派手に陶芸文化を主張しているわけではありません。むしろ、街の中のあちらこちらにひっそりと潜む、文化の断片を発見することに、この街を散策する楽しみがあるようにも思います。その代表格が、使い古しの器や残った陶器・型を、垣や塀に埋め込んでデザインに生かされているもの。「窯垣」というのだそうですが、観光用にキレイにデザインされたものよりも、その奥深くにどんどんと歩いて行ったところに散在する、「余ったから使っちゃった」ぐらいの軽いノリ(?)でつくられたような無造作なものの方が、なんとも言えぬ良い味わいを出しているように思いました。もともとの用途と別の使い道をして再利用するアートを指して、レヴィ・ストロースは「ブリコラージュ」と呼んだのですが、ガウディの建築の表層を覆う装飾と同じように、瀬戸の窯垣はどこか愛嬌に満ちた美しいブリコラージュになっていました。

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街の隅々に窯元としての風情が染み渡る風土。全国にそのような地域はいくつかありますが、それぞれの風土で、永年の間に培われてきた知恵や技法というのがあるそうです。個人の造形的な才に溺れることなく、まずはその「伝統」のなかに深く身を浸し、関わるいろいろな人々の話に真剣に耳を傾け、あらゆることを吸収しようとしなければ、大切なことを得ることはできないことを、施主である陶芸家から聞きました。

今回、アトリエ住居を計画するのは、この風土から遠く離れ、多摩湖に程近い狭山の地。創作の上で慣れ親しんだ風土を離れるというのはどれほどのことでしょうか。派手で目立つ器をつくるのではなくて、他の器とも調和し、日々の生活のなかに息づく、なんとなくいいなあと思える優しい器。そのような器をつくり続ける陶芸家の家とアトリエは、簡素で、即物的で、穏やかな光に満ちたものでありたいと、じわじわと強く思えてきました。

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いちばんいい眺め

2013-03-09 22:04:16 | 住宅の仕事

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富士市で計画している住宅の打合せに行った帰り、お施主さんに車で駅まで送ってもらいながら外を眺めると、傾きかけた陽に照らされて富士山がとても美しく見えました。富士山はいったいどの角度からが一番きれいに見えるか。タモリさんが番組の富士市のロケで、この角度からが一番きれいなんだよな~ということを話していたそうです。そこはそれなりにマニアックな場所で(やっぱりタモリさんはよく知ってますね)、きっといろいろな角度から眺めた結果なのでしょうか。

東京に暮らしていると山の気配も感じることがないですが、僕自身が生まれ育った京都でのことを思い返すと、いつも意識のなかに比叡山がありました。富士山とは比べものにならないくらい小さな山ですが、自分の生活圏内からはいつも見ることができ、少し歪んだそのシルエットが僕にとっての比叡山の姿でした。

時は江戸時代、後水尾天皇は、自身の離宮を造営するにあたり、比叡山が最も美しく見える場所を探し歩いたそうです。いったいどのような尺度で「最も美しい」とするかはとても難しいところですね。どこかで聞いたことがあるのですが、後水尾天皇は、一番の場所を探すのではなく、近からず、遠からず、あらずあらず・・・で探し続けて辿り着いたところ、であったそうです。たしかに、ひとつの真理に向かう筋道かもしれません。

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さて、そうしてできあがった場所がここ。京都市北部にある小さなお寺、円通寺。数年前に訪れたこの時は霞がかかっていて、ほんのりと比叡山が見えるぐらいで、写真だと、どこにあるの~といった感じになってしまいました。でも、柱と生垣で縁取られた構図のなかに、一期一会の風景が広がります。何度でも訪れたくなる、人も少ない小さなお寺。オススメです。

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小さな工房

2012-12-15 23:43:28 | 住宅の仕事

今年の春先に、イタリアのフィレンツェを旅しました。旧市街に残るルネサンス期の建物が、いまだに現役で使われていることにびっくりしました。14,5世紀につくられたそれらの建物は、傷んだところは修理され、風化もしていますがそれが独特の味わいになっています。

そしてさらに印象深かったのは、それらの建物は、素朴でありながらとても丁寧につくられているということでした。しっくい塗の壁を守るように、軒や庇が木で整然とつくられ、雨といも、きちんと雨がはけるように大きなものが取り付けられ、床に流れ落ちた水が排水溝に流れやすいように、床の目地も美しくデザインされているのでした。

決して奇をてらうデザインではないのだけれど、ものごとの役割を楽しむかのようなデザインと丁寧な手仕事は、長い時間を重ねて、より深い魅力を生み出しているように思いました。そんな伝統は、街中で今も元気に活躍する小さな工房に引き継がれているようです。革製品の工房が多いと聞きますが、大量生産のものではなく、ひとつひとつ手で作られるものには、とても惹かれます。

僕が営む小さな設計事務所も、規模という意味では、「小さな工房」の仲間入りです(笑)
小さな工房であるなら、手づくりならではの趣を、設計する住宅に宿したいと思います。

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設計するというのは、職人のように直接ものをつくることではないけれども、光や、影や、質感を味方につけて趣をもたらす術には、こだわりたいと思っています。

光や影や質感を求めようとすると、どうしてもアルミサッシでは物足りなくなってしまう。極端に言えば、アルミサッシだけたくさんついた派手でカッコいい住宅より、光と影と質感の魅力に溢れた窓辺がたったひとつある住宅の方が、心惹かれてしまうのです。(言い過ぎかな?笑)

そこにイスやソファやベンチを置いて、のんびり過ごせるような、そんな窓辺。フィレンツェの古い建物にも、そんな場所がたくさんあったなあ、と、思い起こしたりするのも僕にとっては楽しい時間です。

写真は仙台に建つ「青葉の家」から。

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