パリのアパルトマン

2009-04-19 19:27:31 | 庭師と画家の家

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春先に引き渡しをした「庭師と画家の家」に訪れました。

アプローチとなる前庭には、住まい手の庭師によって植栽がほどこされました。主木はアオハダ。左官塗りの壁を背景に、落ち着いた雰囲気になってきました。

内部にはダイニングテーブルが置かれ、ペンダントライトが取り付けられ、ひとつずつ、場所が形づくられてきていました。

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引っ越し後に訪れたご友人によると、天窓から光の降る階段を上がる感じ、素朴な天井の雰囲気、テーブル脇の小窓から街並みを見る感じなど、以前に暮らしていたパリのアパルトマンを思い出す、とおっしゃっていたそうです。たしかに、古びた陰影深いアパルトマンの屋根裏部屋に、ひっそりと飾られた絵の数々・・・そんなこともイメージしながら設計をしていましたので、とても嬉しい言葉をいただいたなと思いました。

この住宅は全体がギャラリーのような空間になっています。現代の住宅デザインらしいシンプルさとは少し距離を置き、さまざまなオブジェや絵が飾られるなかで立ち現れてくる独特の質感と雰囲気を、大事にしたかったのです。

階段の吹き抜け部分に飾られる大きな絵は、画家である奥様によって描かれ、今は展覧会に出展中です。そこから戻ってきたら、ついにこの家にかけられます。それから次第に、大小さまざまな絵が飾られていく予定です。一足先に、石膏の彫刻も随所に飾られ始めました。それは時に電話台になったり。若い頃の思い出が詰まっているという古びた石膏の彫刻が、静かな雰囲気の光のなかに係留されています。いろいろな思い出とか記憶とかが、ゆっくりと流れ出すように。

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新しい住宅でありながら、ずっとそこに在りつづけてきたような、古びた美しい雰囲気の空間であること。この住宅ではそんなことを求めました。少しずつそれが雰囲気として表れ始めたことに、ちょっと幸せを感じました。

コメント (2)
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