これから数日、東京は雨続きの予報。雨も、しとしと適度に降る分には風情がありますね。日本の古建築や庭園は、雨が降った方が苔も鮮やかに浮き上がり、美しくなるように思います。建物そのものというより、それを取り巻く外部環境と一体となってはじめて、雨の似合う独特の風情はできあがるのだと思います。
雨の似合う場所。そんなことを考えるとき、ある場所の思い出がゆっくりと頭のなかにめぐりはじめます。所沢聖地霊園。建築家・池原義郎が30年以上も前に手がけた静かな場所。何度となく訪れまたが、昨年のこの季節に訪れたときは、雨でした。
霧がかった風景のなか、ぼうっと浮かび上がる白い壁。物語を紡いでいくようなシーンの連続と、部分の形。この建築は周囲の環境と一体となってランドスケープとなりながら、そのなかに様々な「暗示」が造形化されて散りばめられています。それを心のなかで掴み取ろうとするならば、そこを訪れる人も、粛々とした心持ちである必要があるでしょう。雨の日には、そのことが感じやすくなるのかもしれません。