ずっと行きたいと思っていた、神奈川県立近代美術館での企画展「石元泰博写真展 ~桂離宮1953,1954~」に、会期ギリギリの昨日、行くことができました。
雨。しかも横なぐり。まるでシャワーのようだ。そんな日に鎌倉に来たのは初めてですが、桂離宮は、妙に雨が似合う場所だな、と思います。日本の古建築のエッセンスをとりいれて設計されたこの美術館も、雨が似合う場所、なのかもしれない。ですが、だいぶ古ぼけてしまった新建材で覆われた建物は、雨に濡れて少し物悲しそうにも見えました。
あたり一面、なんとなくモノクロームの抑制された雰囲気のなか、展示室内に入りました。そこには、適度に間合いをあけて淡々と展示される、比較的小ぶりな作品の数々がありました。写真はすべてモノクローム。ゼラチンシルバープリントとの記載がありましたが、この何とも言えない湿度のある質感は、デジカメ一辺倒でちょっと忘れかけていたフィルムカメラの魅力を思い起こさせてくれました。
石元氏の写真は、桂離宮という建築写真を撮るというよりも、ファインダーで切り取られた平面構成を楽しむ、といった撮り方で、ちょっと水平・垂直がずれている作品があるのも、キャリアの初期ならではの、感性優先といったところでしょうか。
ずいぶん時間をかけて楽しく鑑賞しました。この写真群のなかに映っている桂は、現実の桂とは印象が異なるものです。写真家の個性が強く表れた構図、そして光。現実には無い、この小さな写真のなかにしかない桂。
桂離宮にはこれまで数度、訪れたことがあります。印象的だったのは、春先の優しい柔らかい光のなかで見た時でした。陰影も柔らかく、沈潜した何かを感じることができたように記憶しています。
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