スキーの季節である。
先々週と先週と、二回続けてスキー場まで精を出して通っている。今年は家族で行くから何かと準備が大変である。息子は新しく買った用具一式に舞い上がり、行きの車の中ですでにゴーグルをはめ、ブーツを履いている。疲れるからやめろと言っても聞かない。車内にスペースさえあれば板まで履きかねない。かくいう私も、初回はあまりに興奮して、現地に着くと車の外でズボンを履き替えようとし、妻に必死に引き留められた。猿と化した二人に妻も呆れ顔である。
しばらく雪山から遠ざかっている間に、世の中はいつの間にかカービングスキー全盛になっていた。私もようやくそのカービングとやらを始める。なるほど短くて軽い。しかしどこをどう滑ればカービングらしいのかさっぱりわからない。幸い、リフトでパトロールのスキーヤーと一緒になり、いろいろ手ほどきを受けた。レールの上に乗るようにして滑ればいいんです。後ろがブレたらダメ。あそこを滑っている人ですか?ああ、あんなの全然だめです。問題外です。慣れたら、とても楽しいですよ。
ずいぶん難しいことを言うなあと思ったが、彼を真似してストックを放棄し、何度か練習する。次第に体が板の上に完全に乗っているような感覚を覚える。これが果たして正しい滑り方なのかわからないが、とても疾走感があって気持ちいい。こうなると妻も息子も下のゲレンデに放置して、ベルトコンベアに乗った製品のように滑走、リフト、滑走を繰り返した。
なんて幸せなんだ。滑りながら、退屈だからいろんなことを考える。山を切り開き、リフトをつけ、ただ登って滑って降りるだけのスポーツ。贅沢なことである。結局スピードを味わっているのだろうが、この非生産的で単純な反復運動にかくも魅力を感じるのはなぜか。
人間が単純に出来ているのだろうな、と単純な結論をつけて思考をさっさとやめにする。こんなことをしていて果たしていいのだろうか、という疑問は頭から追い払う。
帰りに温泉に立ち寄る。二人の猿が、露天風呂で呆けた顔を並べ、雪を眺める。来週も行こうよ。ああ、そうだなあ。呆けた二つの顔は猿らしくゆっくりと紅く染まっていく。
いつの間にか日も落ちた。
先々週と先週と、二回続けてスキー場まで精を出して通っている。今年は家族で行くから何かと準備が大変である。息子は新しく買った用具一式に舞い上がり、行きの車の中ですでにゴーグルをはめ、ブーツを履いている。疲れるからやめろと言っても聞かない。車内にスペースさえあれば板まで履きかねない。かくいう私も、初回はあまりに興奮して、現地に着くと車の外でズボンを履き替えようとし、妻に必死に引き留められた。猿と化した二人に妻も呆れ顔である。
しばらく雪山から遠ざかっている間に、世の中はいつの間にかカービングスキー全盛になっていた。私もようやくそのカービングとやらを始める。なるほど短くて軽い。しかしどこをどう滑ればカービングらしいのかさっぱりわからない。幸い、リフトでパトロールのスキーヤーと一緒になり、いろいろ手ほどきを受けた。レールの上に乗るようにして滑ればいいんです。後ろがブレたらダメ。あそこを滑っている人ですか?ああ、あんなの全然だめです。問題外です。慣れたら、とても楽しいですよ。
ずいぶん難しいことを言うなあと思ったが、彼を真似してストックを放棄し、何度か練習する。次第に体が板の上に完全に乗っているような感覚を覚える。これが果たして正しい滑り方なのかわからないが、とても疾走感があって気持ちいい。こうなると妻も息子も下のゲレンデに放置して、ベルトコンベアに乗った製品のように滑走、リフト、滑走を繰り返した。
なんて幸せなんだ。滑りながら、退屈だからいろんなことを考える。山を切り開き、リフトをつけ、ただ登って滑って降りるだけのスポーツ。贅沢なことである。結局スピードを味わっているのだろうが、この非生産的で単純な反復運動にかくも魅力を感じるのはなぜか。
人間が単純に出来ているのだろうな、と単純な結論をつけて思考をさっさとやめにする。こんなことをしていて果たしていいのだろうか、という疑問は頭から追い払う。
帰りに温泉に立ち寄る。二人の猿が、露天風呂で呆けた顔を並べ、雪を眺める。来週も行こうよ。ああ、そうだなあ。呆けた二つの顔は猿らしくゆっくりと紅く染まっていく。
いつの間にか日も落ちた。