安曇野で美しい光景を見た。
小高い丘の上にギャラリーがあり、喫茶室が併設されていた。私と妻はテラスの席に座り、コーヒーを飲みながら、芝生の広がる牧場と、さらにその向こうに小さくかたまる街並みと雄大に広がる山々を見下ろしていた。芝生は非常に手入れが生き届いていて、光沢を放つ高級な絨毯のようであった。
雨が降り始めた。芝生は静かに濡れていった。私と妻はコーヒーを飲み終えてもそれをじっと眺めていた。
やがて雨は上がり、雲に切れ間ができた。妻が叫んだので目を凝らすと、眼下の街並みに大きな虹の脚がかかっていた。
虹は次第にくっきりと姿を現した。七色を指さしながら数えられる気がした。これ以上願うものは何もないと思えるような光景であった。
・・・・・・・・・・・・・・
結婚記念日を四日後に控えた昼下がりの話である。二人ともしみじみとして言葉少なになった。「もう、十分な記念品だね」と私が呟くと、「そんなことはないけど」と答えが返ってきた。これだから女は油断できない。
小高い丘の上にギャラリーがあり、喫茶室が併設されていた。私と妻はテラスの席に座り、コーヒーを飲みながら、芝生の広がる牧場と、さらにその向こうに小さくかたまる街並みと雄大に広がる山々を見下ろしていた。芝生は非常に手入れが生き届いていて、光沢を放つ高級な絨毯のようであった。
雨が降り始めた。芝生は静かに濡れていった。私と妻はコーヒーを飲み終えてもそれをじっと眺めていた。
やがて雨は上がり、雲に切れ間ができた。妻が叫んだので目を凝らすと、眼下の街並みに大きな虹の脚がかかっていた。
虹は次第にくっきりと姿を現した。七色を指さしながら数えられる気がした。これ以上願うものは何もないと思えるような光景であった。
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結婚記念日を四日後に控えた昼下がりの話である。二人ともしみじみとして言葉少なになった。「もう、十分な記念品だね」と私が呟くと、「そんなことはないけど」と答えが返ってきた。これだから女は油断できない。