た・たむ!

言の葉探しに野に出かけたら
         空のあお葉を牛が食む食む

秋は何をしているか

2005年08月31日 | Weblog
夏が言いました。
「わしは暑い」
冬が言いました。
「わしは寒い」
夏と冬が言いました。
「じゃあ秋は?」
夏が誇らしげに言いました。
「わしは山々を緑にする」
冬が誇らしげに言いました。
「わしは美しい雪を降らせる」
夏と冬が不満そうに言いました。
「じゃあ秋は?」
夏が秋をなじりました。
「お前さんはちゅうとはんぱなのだよ、やってることが。草木を育てることもできなければ、一面を銀世界に変えることもできない」
冬が秋をからかいました。
「お前さんが一体何をした? 木の実を熟させたと言いなさんなよ。そりゃ夏さんの努力があってこそだ。朝晩を冷やしましたなんて言いなさんなよ。そりゃわしが早めの準備をしているんだ」
夏と冬が秋をとりかこんでつめ寄りました。
「お前さんは一体何ができる?」

秋がか細い声で答えました。
「私は夏の終わりを知らせます。冬が来るのも知らせます。私は夏と冬の変わり目をみんなに知らせます」

夏が舌打ちして言いました。
「ちぇっ、知らせるだけか。ま、お前が知らせなきゃわしは終われないからな」
冬が肩をすくめて言いました。
「大した仕事じゃないなあ。ま、お前のおかげでみんな、わしの来る心構えができるのだが」
夏と冬がうなずき合って言いました。
「ま、それならそれでいいか」

こうして夏と冬は、秋からはなれてもとの位置にもどりました。
すべてはいままでどおりです。夏の横に秋が、秋の横に冬が。

めでたしめでたし。
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うわ、いい加減だ・・・。

2005年08月31日 | Weblog
─秋がきたら─


秋がきたら
ドンツクドン
山は出家を志し
野辺はただただ嘆息し

秋がきたら
ドンツクドン
村の子どもは虫の音に
思わず急ぎの足を止め

秋がきたら
ドンツクドン
町の子どもは焼き芋の
匂いは無料と足を止め

秋がきたら
ドンツクドン
恋人たちは相手への
感謝の気持ちを思い出し

秋がきたら
ドンツクドン
独身者(ひとりもの)はくしゃみして
部屋の掃除を思い立ち

秋がきたら
ドンツクドン
まだまだ続くよ秋のうた
短い季節に長いうた

(ということでつづく予定。)
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☆政治家適性診断テスト☆

2005年08月30日 | 写真とことば
①王様の機嫌を取りなさい

②仲間内の機嫌を取りなさい

③国民の機嫌を取りなさい


政治家として一つ選べと言われたら、あなたならどれを選びますか?

①を選んだあなた⇒独裁制の社会があなたには向いています。

②を選んだあなた⇒独裁制並びに民主制の社会があなたには向いています。

③を選んだあなた⇒民主制の社会があなたには向いています。

どれも選びたくないと思ったあなた⇒あなたは政治家には向いていません。



という皮肉。

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つむじ

2005年08月27日 | 写真とことば
昔から、二階にある喫茶店が好きである。

コーヒーを啜りながら、道行く人を見下ろすのが好きである。

上手くいけば、人々の頭のつむじが見える。

左巻きの人。右巻きの人。二つある人。

つむじを見ていると、みんなとても楽しそうに見えてくる。

私は人々のつむじを見るのが好きである。


近年、ファッションのせいか、つむじの見える人が少なくなった。

少しさびしい。
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変質

2005年08月26日 | 写真とことば
  (悪魔が笑い)

 木々はすべて立ち枯れた。

 朽木は色を失い

 人々の青ざめて立ち尽くす姿に。

 やがてざらつき、ひび割れ

 瓦解する無数の地蔵に。

 (地蔵の顔も笑い)



 賑やかな話し声が戻り

 私は軽井沢のメインストリートを

 行くあてもなく

 人々に囲まれていた。
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きりんのゆく街

2005年08月24日 | 写真とことば
この街にきりんを歩かせたら

夕日を首に浴びたきりん

その優雅に細い脚で

彼はゆっくりと白線を踏み越える。

躍動する筋肉

真直ぐに見つめる

潤んだ瞳。

生きている物を久しぶりに

見たいのだと

(信号が青に変わった。私はポケットに手を突っ込み、背を丸め、周りの人間たちにぶつからないように歩き出した)

この街で久しぶりに

見たいのだと

自分の欲望の在り処に

気づいた。


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地平線

2005年08月20日 | Weblog
その地平線は光でできていた。

目もくらむほどの。

大地も 空も 透明の冷たく青い闇であった。

ただ地平線だけが。

遥かに、くっきりと、次なる時代のように眩しく。

───何事モ一見ヲ以ッテ信ジテハナラナイ。

私は目を凝らした。

光と思ったものは豚であった。

豚であった。

光る豚が長い隊列を成して行進していた。地平線は無数の豚であった。

「あの涯に」

先生は渋茶を啜った。「解決されない明治がある」

哄笑! 哄笑! 私は哄笑し、ちぎれるほどに下唇を噛んだ。

誤解していたのだ。ずっと。私は。

箸の持ち方さえ覚えれば
何でも食べられるのだと
誤解していたあの頃のように。

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初恋のころのときめきを

2005年08月18日 | 写真とことば
初恋のころの
       ときめきを
            取り戻したいと言うなら

あのころの謙虚さも
           一緒に取り戻さなくちゃ。


~ある人の言葉(31)
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はいく

2005年08月17日 | 俳句
 石選れば 夏の涙が 二個三個
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土地の奇跡に乾杯して(サントリー白州蒸溜所限定販売ウイスキー)

2005年08月16日 | 食べ物
 カテゴリーは「食べ物」の中に入れたが、飲み物の話題。

 夏の始めに、友人がサントリー白州蒸溜所に立ち寄り、そこでしか販売していないウイスキーを手土産に持ってきてくれた。

 これがすこぶる旨い。二人とも殊更ウイスキー党ではないにもかかわらず、まるでワライダケをかじったように愉快になりながら(無論私はワライダケをかじったことがない)グラスを重ねた。写真は、二人して一晩で(と言っても小一時間ほどだが)五分の四ほど空けたシングルモルトのボトルを、私の愛する中古ピアノの上に置いて撮影したものだ。

 なぜあれほどに美味であったか。我々はその夜、売値の五倍の価値をそのボトルに対し見積もったものだ。あれが工場直販だったからか。工場直販というのは、かくもすごいのか。ウイスキーのような、必ずしも鮮度を求めないものにおいても。それとも、久しぶりに再開した我々の気分のなせる精神的な味付けだったのか。

 あれから半月以上経った今となってはなおさら不明に帰すしかないことであるが、ただもし、工場直販が少なからず要因となっていたのだとしたら、そうだとしたら、なんと今日の我々は───遠くの大工場から複雑な流通経路により長い道のりを経てきたものを食する今日の我々は、かつての日本の、家でどぶろくを作り、村で加工を賄っていた時代と比べ、なんと不幸なことかと、これまた勝手に妄想を膨らませたのは、ひっきょう、酒飲みのたわ言か。

 二晩で空になったボトルは今、花瓶として我が家の下駄箱の上で余生を送っている。
  
 
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