案山子
私は不自然でございます。
下手な生き物よりも生き物らしく
毅然として日を見送るのでございますが
如何せん私には友が無く
友を探しに出かける脚もございません。
私は不自然でございます。
「下手な」はこれわが毒舌で
つまりは当てこすりでございますが
如何せん誰にも相手にされず
両腕ははい、顔を覆うことすらできません。
私は不自然でございます。
それでも恋をしたこともございます。
相手は農家の末娘
紫と白の詰草を十摘んで
襟元にそっと差し込んでくれました。
それから麦わら帽子を直し
私を「さん」づけで呼びました。
ああ、渾身の力で動けたなら!
如何せん私には声も無く
無愛想に山を見つめておりました。
近年ますます不自然に
かしぎながら生きております。
まだもうしばらく案山子でおります。
私の色褪せた胸元に
朽ち果てたあの詰草が一欠けら。
私は不自然でございます。
下手な生き物よりも生き物らしく
毅然として日を見送るのでございますが
如何せん私には友が無く
友を探しに出かける脚もございません。
私は不自然でございます。
「下手な」はこれわが毒舌で
つまりは当てこすりでございますが
如何せん誰にも相手にされず
両腕ははい、顔を覆うことすらできません。
私は不自然でございます。
それでも恋をしたこともございます。
相手は農家の末娘
紫と白の詰草を十摘んで
襟元にそっと差し込んでくれました。
それから麦わら帽子を直し
私を「さん」づけで呼びました。
ああ、渾身の力で動けたなら!
如何せん私には声も無く
無愛想に山を見つめておりました。
近年ますます不自然に
かしぎながら生きております。
まだもうしばらく案山子でおります。
私の色褪せた胸元に
朽ち果てたあの詰草が一欠けら。