た・たむ!

言の葉探しに野に出かけたら
         空のあお葉を牛が食む食む

地元の温泉「白糸の湯」にて詠める歌

2024年07月14日 | 短歌

 

 東屋と母屋の間に落ちる雨

 

   手を差し伸べて又  湯舟に沈まん

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

女(ひと)。

2024年07月12日 | 断片

 

雨の日の小庭に咲く薔薇のような人だった。

 

どんなときに見せる笑顔も、そう、そっと泣き腫らした後のような。

 

 

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

掻痒(そうよう)感

2024年07月09日 | essay

 何をやっても落ち着かない日、というのがある。

 窓の外を眺めても駄目。パソコンを開いても駄目。柔軟体操をしてみてもすぐに止め、コーヒーを淹れようと薬缶に水を溜めるが、結局気が変わり火にかけずじまい。思い切って屋外に出て街中を歩いてみても駄目。コンビニに立ち寄り菓子パンを買ったところが、全然食べたくなかったことに気づく始末。

 音楽でも聴けば良いが、音楽を聴く気にもならない。部屋のどこに座り込んでも、数分で、まだ立ち上がっている方がマシな気分になる。こんな精神状態で、用もなく電話できる相手もいない。

 何より落ち着かなくさせるのは、その原因が自分にあるからだ。

 ああ。そうだ。まるでずっと、「自分が気に食わない」、「自分が気に食わない」、とつぶやいているようなものなのだ。

 掻痒! 心の掻痒!

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

因果

2024年07月08日 | うた

私は逃げようがないのです。と、花は答えた。

私はただ、ここで咲き続けるしかないのです。

あなた方に狂わされた日の光に照らされても

最後の水一滴が喉元から消えて去るまで

ただじっと微笑み続けるしかないのです。

それから静かに項垂れ、枯れ果てて

あなた方に踏まれる時を待つのです。 

 

 

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

トマト賛歌

2024年07月04日 | うた

暑い。孤独だ。

五十になって、自分で選んだ自営業の道に孤独を感じるとは、今日が暑過ぎるせいだろう。

もっと同僚とふざけ合いたかった。

上司に叱られたり褒められたかった。

部下に恰好つけたかった。

いろいろな煩わしさを振り払ったがため、

発泡スチロールのようにすかすかな日々になってしまった。

やむを得ない。これも自分で選んだ道だ。

孤独と暑さのあまり事務所を飛び出し、近くの商店に飛び込む。

店という店が軒並みコンビニとモールに食いつぶされた中で、

辛うじて昔ながらの個人商店として続けている稀有な店だ。

百円のトマトをひっつかみ、金を払い、

事務所に帰ってかぶりつく。

ジュースのように分かり易い甘味はないが、旨い。かすかに大地の香りがする。

百円のトマトが、自分にはお似合いだ。

窓から七月の青い空を睨み、

少しだけ闘争心を取り戻す。

 

 

 

 

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする