仕事に追われ何も書けない日々が続くので、書くことがなくても日記を続ける。前二日の日記は、日付が一週間分間違っていた。人に指摘されたが、それでも気付かず、再び指摘されてようやく事態を呑み込む次第である。大変危険な状態である。地上に足をつけて歩いている気がしない。
近所の図書館に仕事で立ち寄り、ついでに付設の喫茶店で昼食をとる。すでに昼は食べていたにもかかわらず。胃を苦しめてもいいから喫茶店で時を過ごしたかったのである。喫茶店に逃げ込みたかったのである。それなら珈琲を飲めばいい。いやしかし、珈琲を飲むほどの心の余裕すらなかったのである。
窓辺の席に座る。店内はカウンターでスポーツ新聞に顔を埋める男の他、がらんとしている。窓から差し込む日差しはとてもやわらかく、私は左肩を陽に預けて眠るようにうなだれる。来るとき肩に触れた霧雨は続いているのだろうか。顔を上げる。窓から見える中庭は、湿っているようにも乾いているようにも見える。
窓か。私は小さい頃、窓から外をずっと眺めている子供だったらしい。
喫茶店の窓から外には、間違っても飛び出せない。飛び出しちゃだめだよ、僕。大きなガラス窓は外を眺めるためのものでしかない。してみると、これは監獄の格子窓のようなものである。だから外を眺めたくなるのだ。そして監獄なら、それはそれで、過酷な現状も甘んじて受け入れようという気にもなるのだ。
支離滅裂なことを疲弊した頭で考えていたら、カレーライスが来た。見るやいなや食欲を失ったが、私は大きなスプーンを武器のように手にとり、威勢よくライスに突き刺した。