bar■では、ときどき他客の会話がジャズ・セッションのようにほろ酔い心地に鳴り響く。
──本当に惹かれてたら、退かれてもいいじゃん。
なかなかの名言と思われるこの一女性の言葉を、結婚式の二次会集団は式で出たロブスターのように黙殺した。
──でも、
とすぐにリーダー格の男が話の続きを引き受ける。
──田んぼは売っちゃいかん。まあ飲めよ。でも、田んぼは売っちゃいかん。
二杯目のドリンクが行き渡る。もちろん頼まない人もいる。
──わたし、どっちかというと、空気がやわらかい人が好き。
──でも、土地を手放しちゃいかん。
さあ、そろそろカウンターのカラス貝は退散するとしましょうか。マスター、勘定を。
え? うん、外は寒いと思うよ。 仕方ないよ。 メリー・クリスマス。