十一月上旬、両親を連れて草津温泉へ。たまには親孝行しないと槍が降ってくる恐れがあるため。
草津の湯はさすが名湯と言われるだけあって、五体に染みいる気持ちよさがあった。
一泊して翌日、そのまま帰ればいいのに、父親が欲を出した。近くに白根山という山があるらしいから、車で登ってみようと言いだす。まあ、これも旅のついでである。ちょっと立ち寄ってみようかと、温泉場の裏山くらいの感覚で登り始めたら、これがとんでもない大きな山であった。ふもとは晴れていたのに、山腹の針葉樹林は氷結している。道路に雪が残っているところもある。のみならず、地面から硫黄が煙を上げている箇所もある。何なのだあの煙は? とわれわれは動転した。白根山は立派な活火山なのだ。おまけに、というかなぜだか、というか、車のガソリンがはなはだ心もとない。反対側の村まで持つか微妙である。道々、工事をしている人にあと何キロあるか尋ねながら、びくびく運転して山を越した。
ちなみに、工事のおじさんは引き返すよう勧めた。わかりました、と答えておいて、それでも家族間の協議の末、結局進路を変えず山を越したのは、やはり無謀をおかしたがる血筋なのだ。工事のおじさん達は、さぞかし、何なんだあいつら、と思ったことだろう。
最後は音楽もエアコンも切って下山した。温泉から出て冷や汗をかいていれば世話はない。