「落ち着かないんだ」
背を丸め、顎を突き出し、貧乏ゆすりをしながら、目はやたらぎろぎろとして正面に座る私を見つめていた。その姿は、確かに落ち着きがなかった。
「何をしても落ち着かないんだ」
そんな言葉さえどもり気味である。声に力はなく、性急で、哀れっぽかった。この世で一番嫌いなものは自分自身だと白状しているようなものであった。
私はいらいらした。こういう相談を持ちかけてくる人間は、たいてい、全ての原因を自分に持っている。そのくせ、決まったように、全てが手遅れになってから口に出してくるのだ。
「ねえ、どうしたらいいと思う?」
「知ったことか。もう遅い。自分で解決しろ」
私は精いっぱいの皮肉を込めて言い返してやった。
はい、本番五分前です、という声が私の後ろから掛った。
私は溜め息をつき、意を決し、鏡の前から立ち上がった。
背を丸め、顎を突き出し、貧乏ゆすりをしながら、目はやたらぎろぎろとして正面に座る私を見つめていた。その姿は、確かに落ち着きがなかった。
「何をしても落ち着かないんだ」
そんな言葉さえどもり気味である。声に力はなく、性急で、哀れっぽかった。この世で一番嫌いなものは自分自身だと白状しているようなものであった。
私はいらいらした。こういう相談を持ちかけてくる人間は、たいてい、全ての原因を自分に持っている。そのくせ、決まったように、全てが手遅れになってから口に出してくるのだ。
「ねえ、どうしたらいいと思う?」
「知ったことか。もう遅い。自分で解決しろ」
私は精いっぱいの皮肉を込めて言い返してやった。
はい、本番五分前です、という声が私の後ろから掛った。
私は溜め息をつき、意を決し、鏡の前から立ち上がった。