夢の中で男と出会った。
彼は全身がバターでできていた。彼は巨大なバターナイフをプラカードのように右腕に持ち、左腕は頭上の空をわしづかみにし、背中をそらせてじっと立っていた。彫像のポーズをしているのだな、と私は思った。彼はなるべく動かないように努めているのだが、ときどきバターナイフを自分の体に押し当ててあちこちが溶け落ちそうになるのを防がなければならなかった。何しろ温度は私には快適だったので、バター男には暖かすぎたのだろう。それにバターナイフを持つ手を落ち着きなく動かすので、余計に体温が上がって脂汗が滴る様子である。このままだと彼は遠からず全身が溶けて水溜りのように地面に黄色く溜まることになると思った。
「安物だからどうしようもないんだ」
彼は泣きべそをかいたような崩れた顔で私につぶやいた。
「もっと高価なバターに生まれればよかったんだ」
突き上げていた彼の左腕がついに落ちた。顔はますますけだもののように歪んだ。
私は彼を慰めてあげたくなった。
「人間の体でいる必要はないんじゃないかな」
なるべく優しい声音で、私は彼に語りかけた。「そんな無理なポーズをとる必要もない」
「馬鹿言え」
彼は首を胸に、胸を腹に埋めながら毒づいた。
「それじゃ近代化した意味が丸でないじゃないか」
その言葉の真意を尋ねようと思ったら、夢から醒めた。
彼は全身がバターでできていた。彼は巨大なバターナイフをプラカードのように右腕に持ち、左腕は頭上の空をわしづかみにし、背中をそらせてじっと立っていた。彫像のポーズをしているのだな、と私は思った。彼はなるべく動かないように努めているのだが、ときどきバターナイフを自分の体に押し当ててあちこちが溶け落ちそうになるのを防がなければならなかった。何しろ温度は私には快適だったので、バター男には暖かすぎたのだろう。それにバターナイフを持つ手を落ち着きなく動かすので、余計に体温が上がって脂汗が滴る様子である。このままだと彼は遠からず全身が溶けて水溜りのように地面に黄色く溜まることになると思った。
「安物だからどうしようもないんだ」
彼は泣きべそをかいたような崩れた顔で私につぶやいた。
「もっと高価なバターに生まれればよかったんだ」
突き上げていた彼の左腕がついに落ちた。顔はますますけだもののように歪んだ。
私は彼を慰めてあげたくなった。
「人間の体でいる必要はないんじゃないかな」
なるべく優しい声音で、私は彼に語りかけた。「そんな無理なポーズをとる必要もない」
「馬鹿言え」
彼は首を胸に、胸を腹に埋めながら毒づいた。
「それじゃ近代化した意味が丸でないじゃないか」
その言葉の真意を尋ねようと思ったら、夢から醒めた。