昔、人類には豊かな時間があった。ただ豊かな食がなかった。
だから彼らは時間を費やし、食のために奔走した。
今、世間には豊かな食が溢れ、その代り豊かな時間を失った。
それを取り戻すため、彼らはお金という名の富を費やす。
そのお金こそ、時間を犠牲にして得たものであるのに!
堂々巡りは古代から、人類の性(さが)である。
ごく稀に、その堂々巡りを脱する者もいる。
豊かな時間のために、潔く他を犠牲にできる者である。
人はかつて、彼らを隠者と呼んだ。今は変わり者と呼ぶ。
どちらにもなり切れない中途半端な輩が
ときどき野に出て、深く息をつく。
※写真は独鈷山。