た・たむ!

言の葉探しに野に出かけたら
         空のあお葉を牛が食む食む

森の雨

2023年05月08日 | essay

 雨の日曜日、だらだらと家で過ごそうとも思ったが、一つにはさほど雨脚が強くなく、もう一つに飼い犬が連れて出ろとうるさいので、犬を車に乗せ、牛伏寺のフランス式階段工に行ってみることにした。最近立て続けに何度か犬をドライブに連れ出したところ、犬の方でそれが当たり前と思いこんだらしい。すぐぜいたくに慣れるあたりが人間と同じで始末に負えない。少しは雨に打たれて後悔すればいい。

 フランス式階段工は、静かな森に囲まれ、川が幾つもの人工の滝となって静かに流れ落ちる、なかなか風情のある場所である。人が少ないのがいい。川岸は整備されて遊歩道があり、あずまやもある。

 傘を差し、犬を連れて歩いた。霧雨に打たれる新緑が実に鮮やかである。一幅の水彩画を見ているようだ。橋を渡り、小道を上り、あずまやに入った。ここだと雨も当たらない。座ってじっと外を眺めていると、体の細胞が一つずつ新鮮なものに置き換わっていくような気がした。雨の森も素敵なんだとつくづく思った。

 半分犬の我がままに付き合わされた感があったが、出かけてきてよかった。これだから犬を強くも叱れない。

 カメラを持って出なかったので、写真がないことを後悔している。

 

 

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