雨が上がったところで友人に電話で誘われ、飲みに出る。裏通りの水溜りは汚らしく闇とネオンを映している。
「わかっちゃいないんだ、あいつは、何にも」
「そうかね」
「いや、あいつがどんな人間であるかは、お前に話してもわからんだろう」
それでは結局何もわからないことになるなあ、と思いながら薄い水割りを口に含む。
太古から、人間は、人間のことがわからん、わからん、と嘆きながら何千年も生きてきたような気がする。親兄弟、恋人、隣人、リーダー、部下、仲間・・・・。最後は、と、これは口に出して誰かに愚痴ることがあまりなかろうが、自分自身。
「それ以来、あいつのことは絶対信じられん」
「うん」
我々は、ひょっとして、信じられる人を増やすために生きている。人間関係を築き、日々努力している。親兄弟、恋人、隣人、リーダー、部下、仲間・・・そして、自分自身。一人でも多くの人を、信じたい。まるで、信じられる近親者の数が、幸福を測る指数であるかのように。
問題は、裏切られる数も多いということだ。ええと、自分自身も含めて。
水割りグラスは二、三度傾けるとすぐに氷だけになる。カラカラ言うだけで、なかなか酔えない。
店を出る頃には、通りのネオンも消えて、秋風だけが行き過ぎていた。
「わかっちゃいないんだ、あいつは、何にも」
「そうかね」
「いや、あいつがどんな人間であるかは、お前に話してもわからんだろう」
それでは結局何もわからないことになるなあ、と思いながら薄い水割りを口に含む。
太古から、人間は、人間のことがわからん、わからん、と嘆きながら何千年も生きてきたような気がする。親兄弟、恋人、隣人、リーダー、部下、仲間・・・・。最後は、と、これは口に出して誰かに愚痴ることがあまりなかろうが、自分自身。
「それ以来、あいつのことは絶対信じられん」
「うん」
我々は、ひょっとして、信じられる人を増やすために生きている。人間関係を築き、日々努力している。親兄弟、恋人、隣人、リーダー、部下、仲間・・・そして、自分自身。一人でも多くの人を、信じたい。まるで、信じられる近親者の数が、幸福を測る指数であるかのように。
問題は、裏切られる数も多いということだ。ええと、自分自身も含めて。
水割りグラスは二、三度傾けるとすぐに氷だけになる。カラカラ言うだけで、なかなか酔えない。
店を出る頃には、通りのネオンも消えて、秋風だけが行き過ぎていた。