フォルカー.シュレンドルフの「魔王」という映画を観る。あの「ブリキの太鼓」の監督の作品だ。ジョン.マルコビッチ演じる、悪魔と天使が同居した(一般に子供の心を持った大人と言う)ナチスに捕まったフランス軍捕虜(何故か英語しか喋らないが)の数奇な運命を描いた映画であるのだが、題材の割にはあまり面白くない。テンポが良くないのか歯切れが悪いのか。これは「ブリキの太鼓」にも言えることなのだが、偏に監督のせいである。
と、映画そのものは今一つだったが、唯一面白い発見をした。例によって、どこかで見たことある役者を発見したという、映画そのものには全く関係ないところでの喜びというやつであるが、今回のものはかなり喜び指数は高い。役者の名前は「ディーター.ラザー」。この名前でピンと来る人は相当なマニアだ。発見した本人も、後で名前を確認してこんな名前だったのかと分かったのだ。それはあの悪趣味見世物映画の「ムカデ人間」の主役だったのだ。「ムカデ人間」では、人間合体の夢にとり憑かれた外科医の役だったが、「魔王」では、優生学にとり憑かれた研究者の役だった。どちらも狂気の領域に達した人間で同じような役どころ。これを発見したときは笑ってしまった。ドイツ国内では、この手の役には「ディーター.ラザー」、と多分お約束になっているのではないだろうか。日本で言えば「天本英世」、アメリカならば「ピーター.カッシング」、ってところがいい感じ、か?