日本映画を二本たて続けに観たのだが、その両方に「染谷将太」という男優が出ていて、最近良く見る顔だと思い、そう言えば「ヒミズ」で賞を貰ったのも彼ではないかと思い至った。今現在一番の売れっ子ではないか、という話はどうでもよく、観たものは瀬田なつきの「嘘つきみーくんと壊れたまーちゃん」と青山真治の「東京公園」の二本だった。
「嘘つきみーくんと壊れたまーちゃん」は、子供の頃の監禁事件の被害者が、当時のトラウマを抱え、今度は同じような事件の当事者(加害者側)になるところのドタバタを、重いテーマとは逆に敢えて軽いタッチで喜劇調に描いている。のだが、商業映画を意識してなのか(多分この監督の元々のスタイルではない)、どうもやり過ぎの感が強く成功しているとは思えない。
「東京公園」は、一見穏やかそうな、実は孤独を抱えている都会の人々を描いた作品で、これも手法としてはリアリズムではなく、むしろある種のファンタジーという形をとっている。どろどろした人間関係は描かず、さらっとした関係を、さらっと描いている。出演者も、三浦春馬、榮倉奈々、小西真奈美と濃さのない役者で、映画の雰囲気にピッタリはまっている。その加減が全体的に程よく、変にきれいごとと感じさせることもなく、且つ嘘っぽくもなく、映画の世界がすっと入り込む。特に「榮倉奈々」は良い役者ではないか(演技が上手いなどという余計なものではなく素材力として)と個人的には強く思った。