ジャンゴと言われて直ぐにフランコ.ネロのあれね(続 荒野の用心棒)、とピンとくるような人は今ではそう多くもないと思うが、そのDJANGOをタイトルとした新しい映画がタランティーノの新作ジャンゴ 繋がれざる者。例によって、昔の娯楽映画(今回はマカロニウエスタン)に対する愛に溢れている。唯そのジャンゴは、フランコ.ネロ(ちゃんとイタリア人として今回出てくる)ではなく黒人である。
黒人主人公のウエスタンと言うと、マリオ.ヴァン.ピープルズの黒豹のバラード(かなり面白いと思ったが世間的には全く評判にならず)を思い出すが、タランティーノも当然それは頭の中にあると思う。新作ジャンゴは、マカロニウエスタンのような野暮ったいズームをわざと使い、当時の雰囲気を演出するが、そこはタランティーノ、全体でははるかに洗練されたウエスタンとなっている。内容はジャンゴで分かるように、凄腕ガンマンがバッタバッタと敵を撃ちまくるということだけだ。当然何回か危機が訪れるがこれも当然のこと乗り越える。物語は全てお決まりであるが、これこそがマカロニウエスタンの定型である。そしてそんなことは分かっていても楽しめるのがタランティーノの映画である。
出演者もなかなかいい味を出している。ジャンゴ役はジェイミー.フォックス。あまりよく知らない。それより共演のジャンゴを助けるクリストフ.ヴァルツがいい。イングロリアスバスターズのあの厭らしいナチスの将校だ(あれも上手かった)。今回はしっかり良い役で前回分をすっかり挽回した。ディカプリオ(えげつない農場主)も十分憎たらしさがでていたし、相変わらずタランティーノ本人も馬鹿役で出てるしと、役者も適材適所という感じである。肝心なのを忘れていた。もっとも憎たらしいのがサミュエル.L.ジャクソンだった。このいやらしさを実感するには映画を見てもらうしかない。
そして音楽。いつも印象的な音楽を使うのだが、今回は今までで一番のツボであった。イントロクイズでもやったら2秒で答えられた。それはジム.クロウチのI Got A Name 。この頃の音楽は記憶に深く刻まれている。と、懐かしさが満開であるが、それらを知らなくても全く問題なく楽しめる映画である。長尺ではあるが(3時間弱)時間を感じさせない。