T君と、最近の東京でのデリカテッセン(洋風総菜屋)事情を話す。どうやら本格派(日本風にアレンジしたものではなくフランスそのままのような総菜屋)が増えつつあるようで、やっと東京でもそういう店が定着してきたか、と二人で得心し、しかし、例えばこれと同じ店を田舎(当地のような)でやっても絶対買う人はいないねとこれも二人で納得。それ以前に、ちゃんと自分の所で作る普通の和総菜屋すらないし、とその状況を慨嘆。
「そういう店だとテリーヌは欠かせないね」(私)「そうですね、パテドカンパーニュとかフロマージュドテットとか」(T君)「確かにパテドカンパーニュは必須だけど、なかなか本当に美味いと思うのも少ないね」(私)「決まりきった材料だけど、素材とか微妙な味付け熱の通し方とか難しいんですよね、ところでフロマージュドテットって美味しいんですか?」(T君)「一回食べたのは臭いばっかりで、どう考えてもこれが美味しくなるという可能性は見出せなかったけど、美味しいと言われるところのものを食べてみないと単に味的に嫌いなのか何とも言えまへんわ」(私)
「似たようなものに、タンとかハムとか色々いれてゼリーで固めたようなものもありますよね」(T君)「ああ、アスピックね」(私)「アスピックって言うんですか?」(T君)「あれは好きだよ、でもこれもというか、これの方が美味しいのが少ないよ、三十年近く前に東京の麻布十番にあったドイツ系のデリカテッセンと言うよりはハムソーセージ専門だからシャルキュトリーだね、ここのは今まで食べた中で一番美味いと思ったやつなんだけど、確か四五年でなくなっちゃったよ、まだ麻布あたりでもそういう店が早すぎたんだね、雲雀の舌は入ってなかったけどね」(私)「えっ?雲雀の舌?」(T君)「太陽と戦慄だよ」(私)「キングクリムゾンですがどういう関係ですか?」(T君)...ここで補足説明。太陽と戦慄というのはプログレッシブロックの雄キングクリムゾンの代表的なアルバム。
「太陽と戦慄の原題がLarks' Tongues in Aspicだから、T君は当然知ってるかと思ってたよ」(私)「いやあ、知らなかったですよ」(T君)「そう言えばピンクフロイド派だしね」(私)「そうなんですよ、しかし太陽と戦慄の原題はそうだったんですか、それにaspic、勉強になりやした」(T君)
と、デリカテッセンから始まって最後はプログレ話で終ったのであった。