高松国際パーキンソン病シンポジウムに参加した.若手育成教育を継続的な課題とした充実したプログラムと,海外の著名なエキスパートが参加されること,そして参加者がとても仲の良いことが特徴のシンポジウムである.
2日目のビデオセッションの歩行に関するビデオは非常に勉強になった.面白かったのは歩行時の腕のふりの左右差.これは肩関節の病気,Erb麻痺,脳卒中のほか,症状の左右差を認めるパーキンソン病患者さんで認められるが,なんと,プーチン大統領やメドヴェージェフ首相,さらに他3人のロシア高官は,揃って右手の振りが明らかに少ない(パーキンソン病疑惑!?).これは恐らく銃を素早く打てるように腕のふりを少なくして歩くように,KGBで訓練を受けたためであろうと言われている(BMJ誌のクリスマス論文にもなっている)
文献:“Gunslinger’s gait”: a new cause of unilaterally reduced arm swing
YouTube動画
また初日のビデオセッションでは以下の6症例の提示があったので記録しておきたい.
【問題編】
Case 1 82歳女性
主訴:意識障害.昼寝したが,起きなかった,救急車にて来院.
神経学的に,左への共同偏視と顔面を含む右手のコレア・バリスム
数日続いて徐々に減少した.糖尿病なし.頭部MRIでは左MCA領域の広範な梗塞,基底核病変なし
Case 2 57歳女性
6ヶ月の経過で徐々に増悪する,舌の異常運動に伴う構音障害.喋っていると舌が右前に出てきてしまう.キャンディーを舐めると改善する.
Case 3 79歳男性
眼球運動において,水平に動かすとflutter-like oscillationが出現,その他の小脳性運動失調と振戦を認める.ステロイド治療で症状が改善した.
Case 4 兄妹例
兄47歳男性
39歳:口部の不随意運動,44歳:記憶障害,46歳:歩行障害(ジストニア>コレア)
妹42歳女性
31歳:てんかん・記憶障害,40歳:歩行障害(ジストニア<コレア),42歳:口部の不随意運動
歩行がなんとも特徴的で(peculiar gait),hyperkineticであるが,片足を跳ねるような,フラミンゴwalk.
Case 5
36歳のタイ人男性
舌が動いてしまうことによる構音・嚥下障害,うまく噛むことができず飲み込む状態(Oro-facial dyskinesia).息子の母親はMeige症候群.薬剤中毒(ヘロイン,アンフェタミン)の既往があった.頭部MRI,遺伝子診断,抗神経抗体いずれも異常なし.
Case 6
37歳中国人男性
20年間つづくミオクローヌスとアステリキシス.小脳性運動失調,強直間代発作.STN-DBSが有効であった.
Case 7
50歳女性
20歳:ハイヒールでエスカレーターに乗りにくいことで発症.40歳:歩行障害.46歳,頭部MRIにて基底核に異常所見.50歳:易転倒性,車いす.神経学的に体幹および四肢失調,
軽度の四肢固縮,軽度の認知障害.L-DOPAで一部症状改善.
【回答編】
Case 1
症候学的にはてんかん,つまりEpilepsia partialis continuaでは説明がつかない.診断は,「Cortical hemichorea–hemiballism」とのこと.MCA領域の皮質病変により,cortico-striate-pallido-thalamo-cortical loopが障害され,hemichorea and ballismが生じうるとのこと.
Cortical hemichorea–hemiballismの文献
Case 2 舌ジストニア.心因性の可能性が議論された.
Case 3 抗Yo抗体による傍腫瘍症候群.しかし原発巣不明.
Case 4 chorea acanthocyosis(常染色体劣性,頭部MRIで尾状核萎縮)
Case 5 診断未定だがアンフェタミン誘発性orofacial dyskinesiaを疑っている
Case 6 Progressive myoclonic ataxia(しかしその原因は不明)
Case 7 NBIA(Neurodegeneration with brain iron accumulation)のひとつ neuroferritinopathy,FTL(Ferritin Light chain)遺伝子変異(c.499¬-510del)
SWIで基底核に鉄沈着,DAT-SCANでも低下していたため,L-DOPAを使用し,若干の改善を見た.
2日目のビデオセッションの歩行に関するビデオは非常に勉強になった.面白かったのは歩行時の腕のふりの左右差.これは肩関節の病気,Erb麻痺,脳卒中のほか,症状の左右差を認めるパーキンソン病患者さんで認められるが,なんと,プーチン大統領やメドヴェージェフ首相,さらに他3人のロシア高官は,揃って右手の振りが明らかに少ない(パーキンソン病疑惑!?).これは恐らく銃を素早く打てるように腕のふりを少なくして歩くように,KGBで訓練を受けたためであろうと言われている(BMJ誌のクリスマス論文にもなっている)
文献:“Gunslinger’s gait”: a new cause of unilaterally reduced arm swing
YouTube動画
また初日のビデオセッションでは以下の6症例の提示があったので記録しておきたい.
【問題編】
Case 1 82歳女性
主訴:意識障害.昼寝したが,起きなかった,救急車にて来院.
神経学的に,左への共同偏視と顔面を含む右手のコレア・バリスム
数日続いて徐々に減少した.糖尿病なし.頭部MRIでは左MCA領域の広範な梗塞,基底核病変なし
Case 2 57歳女性
6ヶ月の経過で徐々に増悪する,舌の異常運動に伴う構音障害.喋っていると舌が右前に出てきてしまう.キャンディーを舐めると改善する.
Case 3 79歳男性
眼球運動において,水平に動かすとflutter-like oscillationが出現,その他の小脳性運動失調と振戦を認める.ステロイド治療で症状が改善した.
Case 4 兄妹例
兄47歳男性
39歳:口部の不随意運動,44歳:記憶障害,46歳:歩行障害(ジストニア>コレア)
妹42歳女性
31歳:てんかん・記憶障害,40歳:歩行障害(ジストニア<コレア),42歳:口部の不随意運動
歩行がなんとも特徴的で(peculiar gait),hyperkineticであるが,片足を跳ねるような,フラミンゴwalk.
Case 5
36歳のタイ人男性
舌が動いてしまうことによる構音・嚥下障害,うまく噛むことができず飲み込む状態(Oro-facial dyskinesia).息子の母親はMeige症候群.薬剤中毒(ヘロイン,アンフェタミン)の既往があった.頭部MRI,遺伝子診断,抗神経抗体いずれも異常なし.
Case 6
37歳中国人男性
20年間つづくミオクローヌスとアステリキシス.小脳性運動失調,強直間代発作.STN-DBSが有効であった.
Case 7
50歳女性
20歳:ハイヒールでエスカレーターに乗りにくいことで発症.40歳:歩行障害.46歳,頭部MRIにて基底核に異常所見.50歳:易転倒性,車いす.神経学的に体幹および四肢失調,
軽度の四肢固縮,軽度の認知障害.L-DOPAで一部症状改善.
【回答編】
Case 1
症候学的にはてんかん,つまりEpilepsia partialis continuaでは説明がつかない.診断は,「Cortical hemichorea–hemiballism」とのこと.MCA領域の皮質病変により,cortico-striate-pallido-thalamo-cortical loopが障害され,hemichorea and ballismが生じうるとのこと.
Cortical hemichorea–hemiballismの文献
Case 2 舌ジストニア.心因性の可能性が議論された.
Case 3 抗Yo抗体による傍腫瘍症候群.しかし原発巣不明.
Case 4 chorea acanthocyosis(常染色体劣性,頭部MRIで尾状核萎縮)
Case 5 診断未定だがアンフェタミン誘発性orofacial dyskinesiaを疑っている
Case 6 Progressive myoclonic ataxia(しかしその原因は不明)
Case 7 NBIA(Neurodegeneration with brain iron accumulation)のひとつ neuroferritinopathy,FTL(Ferritin Light chain)遺伝子変異(c.499¬-510del)
SWIで基底核に鉄沈着,DAT-SCANでも低下していたため,L-DOPAを使用し,若干の改善を見た.