Neurology 興味を持った「脳神経内科」論文

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SLE に合併したreversible posterior leukoencephalopathy

2005年03月09日 | 白質脳症
エリスロポエチン投与や輸血により急激に貧血が改善すると高血圧性脳症が現れることは知られているが,時にけいれん発作を伴うreversible posterior leukoencephalopathy (RPL)が出現することがある.画像診断としてはMRI T2WI,FLAIR における頭頂葉・後頭葉の白質,ときに前頭葉・側頭葉白質,小脳・脳幹に信号異常を認める.血管造影では血管の攣縮を一過性に認めた症例も報告されている.
今回,RPL発作を繰り返したSLE症例が報告された.12歳時にSLEと診断され,18歳以降,急性糸球体腎炎の増悪時に,頭痛,視力低下,高血圧,けいれん発作を主徴とするRPL発作を繰り返した.MRIでは頭頂葉・後頭葉白質および視床に多発する信号異常を認め,うち1度の発作において右M1,左A2 portionの数珠状狭窄を認めている.治療としては,phenytoin,免疫抑制剤(ステロイドパルス,azathioprine),血圧コントロールを行い,症状も画像所見も改善した.
検索した限りSLEにRPLを合併した症例の報告はきわめて少ない.しかしコントロール不良のSLE症例で難治性けいれん発作を合併することは時々遭遇するので,もしかしたらこのような症例は急性期にDWIなどで評価を行えばRPL様の画像所見を呈しているのかもしれない.本論文で興味深かったのはRPLの発症機序の考察で,著者らはふたつの仮説を考えている.ひとつは血圧上昇→血管攣縮→ischemic and cytotoxic edemaというものである.もうひとつは血管の自動調節能の消失→頭蓋内細血管拡張→vasogenic edemaというものである.RPL急性期にMRIを撮影することは難しいが,ADC(見かけの拡散係数)の評価ができればこの辺ももう少しクリアになるのかもしれない.

J Neurol 252; 230-231, 2005
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