Neurology 興味を持った「脳神経内科」論文

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ヘロインによる白質脳症

2005年05月26日 | 白質脳症
 ヘロインは乱用薬物の頂点に位置するアヘン類に属する物質で,アメリカでは濫用者に最も好まれているそうだ.ヘロインは化学的加工によりモルヒネから製造され(つまりモルヒネの誘導体),その効力はモルヒネの3倍といわれ,中毒性・依存性も非常に高い.
今回,ヘロインによる白質脳症のMRIが報告されている.49歳男性で約1週間の経過で昏迷が増強.この患者は“Chasing the Dragon”と呼ばれる方法(アルミ箔で包んだ粉末状のヘロインを火であぶり,昇ってきた煙を吸引する方法)でヘロインを吸入している.この患者は小脳失調,記銘力障害,無為,錐体路症状などを呈した.MRIでは大脳および橋の白質にT2, FLAIRでびまん性の高信号を認めた.髄液ではMBPは上昇していたが,OCBは陰性であった.HASL; Heroin-associated spongiform leukoencephalopathyと診断された.
HASLはヘロイン吸引を繰り返し行うと生じるといわれ,病理学的にはミエリン内における空胞形成を伴う海綿状変性を呈することが知られている.MRIでは大脳,小脳,脳幹にT2, FLAIRでびまん性の高信号を認めることが報告されている.こんな病気を鑑別診断に挙げないですむような世の中になることを心の底から願いたい.

Neurology 64; 1755, 2005 
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