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経済の最新情勢から、世界の裏側、そして大人の為のアニメ紹介まで、体当たりで挑むエンタテーメント・ブログ。

トレンドが変わった・・・「経済原理」か「陰謀原理」か?

2012-02-24 09:41:00 | 時事/金融危機
 

■ リスクオンムード一色 ■

バーナンキの2%インフレターゲット発言。
日銀の1%インフレターゲット発言。
ギリシャ第二次支援の決定。

この3つの記事を受けて市場は一気にリスクオンムード。
今までさんざん我慢していただけに、イケイケドンドンという所でしょうか。

ドル/円も80円代、ユーロ/円も107円

「これで危機が回復基調に乗る!!」
・・・と思っている人が居ない所が今回の特徴です。

要は、呼び水に見事に引っかかって、
いままで必死に我慢していたポジションを皆が一気に解消しているだけ。
ここで荒稼ぎをして、今までの損失を少しでも取り返そうという動き。

「赤信号、みんなで渡れば怖くない」とはまさにこの事。


■ ここで逆張り出来るか? ■

「トレンドが変わった」とか「潮目が変わった」という発言もチラホラ。

何か問題が一つでも解決しているのでしょうか?

1) ドルはQE3という実弾が撃てないから
2) FRBが2%インフレターゲットに言及したして口先で相場を操作。

3) 日本は株価低迷で3月期決算がヤバイ
4) 1%インフレターゲットと10兆円の追加緩和で市場を刺激
5) 円安誘導で輸出株を持ち直させる
6) 1%のインフレを目指しながらも、長期国債を買い入れて金利上昇を警戒

7) ギリシャは3月20日は乗り切った
8) 4月の総選挙で国民が何を選択するのか?
9) 5月には再び償還期日がやってくる
10)緊縮政策によりGDPの縮小は確実で、EUとの約束は絶対に反故にされる

「潮目が変わった」のは短期的な事で、
中長期的には世界経済に明るい兆しは見えません。

その一方で、中国、シンガポール、マレーシア当たりがかなり怪しい。
特に、シンガポールはバブル臭プンプンでしたから・・・。

■ リスクオフこそ相応し ■

長年、金融に携わられていた方は、
トレンドの変化を肌身で感じられている事でしょう。

しかし従来のトレンドの変化は景気循環による周期的な変化でした。
経済の縮小が一時期続いた後は、回復が訪れたのです。

ところが現在の世界は回復の為のエンジンが壊れています。
燃料をどんなに投下しても、エンジンが再始動する事はありません。

むしろ現在の上昇トレンドは、燃料を放出して機体が軽くなった為に上昇している様な物。
なんだか、必死にため込んでいた利益を、一気に放出している様にしか見えません。

その事に気づいている方たちは、そろそろリスクオフに舵を切っているでしょう。
利益はそこそこですが、大きく失う事はありません。

市場に長くいらした方は、もしかすると経験的にもう少しイケルと判断されているでしょう。

しかし、現在の世界において「経験」は役に立ちません。
だって、FRBが16兆ドル、勝手にばら撒く世界に、
従来の法則など通用しないのです。


現在世界で進行しているのは、50年、100年に一度のパラダイムシフトです。
その原動力は経済では無く、世に言われる「陰謀」なのです。

誰かの計画(陰謀)に対して、経験則で対抗するのは危険です。
生き残る為には、相手が何を達成しようとしているのかを
ひたすら思考する必要があります。

「世界が今よりも少し良くなる為に」世界の設計者達は何をしようとしているのか。
この視点が大事ではないでしょうか?

「陰謀論者」の多くは、「陰謀者達は世界を奈落に突き落す」と考えています。
私はこれが間違いの根本なのだと思います。
「第二次世界大戦」も「原爆投下とその後の核に抑止力」も、
世界がそれ以上の被害を蒙らない為の、行為なのだと思います。

彼らの戦略の上に、人一人の命という概念は存在しません。
10億人と30億人の命を比較する様な人たちです。

そして、彼らは地球存続の為には、非情にも10億人を切り捨てる事を厭わないのです。



無力化された金融核兵器・・・ギリシャ国債のCDSが消えた!?

2012-02-23 04:16:00 | 時事/金融危機
 


■ 100兆円と言われていたギリシャ国債のCDS残高が2千5百億円に? ■

ギリシャ国債のCDSは、ギリシャの国債発行残高の4倍程度、
100兆円もあると言われていました。

ギリシャの最大の武器が、ギリシャ国債デフォルトに伴うSDSの決済でいした。
この100兆円にも上るCDSの存在があるが故、
ギリシャはデフォルトをチラつかせて、EUから有利な条件を引き出せるはずでした。

ところが、100兆円というCDS残高自体が大きな誇張がある様で
下の記事によればギリシャ国債に掛けられていたCDSは3兆7千億円となります。

『人民の星』 5656号2面 2012年2月8日付
「ギリシャ 八方ふさがり 危機から抜け出せない欧州」
http://ww5.tiki.ne.jp/~people-hs/data/5656-2.html

<引用開始>

(前略)

ギリシャ国債をふくむギリシャへの貸し出しにたいするCDS発行額は四八五億㌦(約三兆七〇〇〇億円)で、そのうちアメリカの銀行が保証している分が三八四億㌦(約三兆円)となり、ギリシャ国債がデフォルトすれば、アメリカの銀行がふっとぶ関係にあるからである。CDSといった金融商品が開発されなければ、問題はもっとかんたんであったのだが、強欲なアメリカ金融資本はもうけのために事態を複雑に、金融全体を泥沼にひきずりこみ、みずからもおぼれようとしているのである。

(後略)

この事に関しては私も大いに反省すべきで、
下記の様な情報を鵜呑みにしてネットに拡散させた責任を感じます。

<引用開始>

東海東京証券チーフエコノミストの斎藤満氏が言う。
「ギリシャ国債の発行残高は3500億ドル(約27兆円)ほどです。しかし、これに対するCDS(クレジット・デフォルト・スワップ)は、その4倍になるとみられている。多くの金融機関が、ギリシャ国債の購入に際し、総額100兆円超の保険を掛けてリスクヘッジしているわけです。つまり、ギリシャの債務不履行で問題となるのは、表に出ている数字の4倍ということになる。その支払いを迫られる金融機関は甚大な打撃を受けます。

<引用終わり>

ただ、CDSの問題がネックでギリシャ問題が進展していなかったのに、
そのCDSの発行残高が3兆7千億円(グロス)しか無い事は疑問にも感じます。
CDSは簿外扱いで貸借対象表に記載されていないので、
CDSの発行残高は把握し難いという指摘があります。
「ギリシャのCDSの支払で世界経済は大変な事になる」と言われたのに
その額が3兆7千億円と聞くと、ちょっとキツネに摘ままれた気分になります。

ところが、先日からの報道で、ギリシャ国債のSCD残高は、
たったの32億ドル(2500億円)程度だと言われています。
この32億ドルという情報の出所は米証券保管振替機関(DTCC)です。

「株の学校」というブログに少し詳しく載っています。
「ギリシャ国債、イタリア国債のCDS残高[ネット] 2012年1月 
http://www.kabu-gakkou.com/2012/01/cds.html

<引用開始>


(表:「株の学校」より)

(前略)

全体の残高(想定元本)はネットの5倍~10倍の規模なので、こちらだけ見るとものすごい影響が出るように思われますが、実際の資金移動の可能性を表すネットの残高を見ると、思った以上にその規模は小さいです。


デフォルトが発生した場合、CDSの買い手は、売り手から、デフォルト時に発生した損失に相当する金額を受け取ることになるので、実際の資金移動は、ネット残高に「1-清算価値[%]」を賭けた金額になります。

CDS買い→+CDS支払い額
CDS売り→-CDS支払い額

⇒同額のCDS買いとCDS売りを持ってる→支払いゼロ
⇒実際の資金移動=ネット残高×(1-清算価値[%])

<引用終わり>




■ 「CDSの解け合い」で消失したギリシャ国債のCDS ■

100兆円のCDS残高は大げさだとしても、
少なくとも3兆7千億円のギリシャ国債のCDSが
本当に2500億円に圧縮されるのかも不思議です。

「株の学校」の説を信用するならば・・・

1) A銀行が発行したギリシャ国債のCDSをB銀行が1千億円所有する
2) B銀行が発行したギリシャ国債のCDSをA銀行が1千億円所有する
3) お互いのCDSを詳細すると、2千億円のCDSが消滅する

本当にこんなに都合良く、あっちの銀行もこっちの銀行も
ギリシャ国債のCDSを発行しまくっていたのでしょうか?

■ CDSの権利を放棄させたのでは無いか? ■

私は疑り深いので、上の様な方法でCDSが消えたとは考えられません。

1) CDSの決済が発生すれば世界的な金融危機に発展する
2) 各金融機関とも世界経済の崩壊は望まない
3) 各金融機関がギリシャのCDSに実際に払った金額は、実際にはそれ程多くない
   (償還期限を多く残す国債のCDS程、実際の支払額は小さい)
4) EUが金融機関にCDSの権利放棄を強要したのではないか
5) CDOにバラバラに含まれるCDSに関しては、どうせ追跡出来ないのでカウントしない

6) 「強制的債務再編」によってCDSの支払義務が生じるのは
   債権の減少を拒んだ一部ヘッジファンド勢のみ。
   このCDSのみを「残高」とカウントすれば、さらにCDSの残高は圧縮できる


ちょっと強引にも思えますが、
ギリシャがユーロ離脱、デフォルトをチラつかせて
金融機関の危機感を煽れば、「崩壊か生き残りか」の選択において、
「CDSの権利放棄」による生き残りの選択の方が合理的決断になります。

EUとしては、法律改正などでCDSを無力化する事も出来たのでしょうが、
それをすると、債権市場のリスクヘッジが無くなり債権市場が崩壊しますから、
裏でCDSの権利放棄を進めたのではないかと私は妄想します。

■ 放射線の如く水増しされた恐怖故に「金融核兵器」? ■

CDSによるパニックの増幅な無ければ、
ギリシャの債務残高は世界がその気になれば大した金額ではありません。

緊縮財政下でギリシャ経済は好転する事はありませんが、
「生かさず殺さず」で、市場の不安定要因であり続ける事は可能です。

ギリシャの次にはポルトガルが控えていますが、
ギリシャのCDS処理が上手くいけば、
同じスキームでCDSを消し去る事は可能です。

ただ、私の中ではギリシャのCDS発行残高の数値は
どうも釈然としないのです・・・。

たったこれだけに金額を世界は「金融核兵器」と恐れていたのでしょうか?
まるで放射線の恐怖が如き「過剰評価」ですが、
だからこそ「金融核兵器」なのでしょうか?

ギリシャ問題はCDSの信用性を失わせる可能性もあります。
フィナンシャルタイムスの記事は注目に値します。
「[FT]ギリシャ債務減免で浮上したCDSの限界」 2012.02.18
http://www.nikkei.com/biz/world/article/g=96958A9C9381959FE3EAE2E7858DE3EAE3E3E0E2E3E3E2E2E2E2E2E2;p=9694E3E7E2E0E0E2E3E2E6E1E0E2

いずれにしても、色々と腑に落ちないギリシャ問題です。
私は元来ギリシャ問題はユーロの財政統合の道具である派ですが、
それにしてもヨーロッパのしたたかさには、背筋が寒くなる思いです。

市場操作のカラクリ・・・なぜ日経平均が上昇し、円安になるのか?

2012-02-22 06:03:00 | 時事/金融危機
 

(日経平均株価推移)


(ドル/円相場)



■ 日銀の追加緩和で何故、日経平均株価が上昇し、円安になるのか ■

1) 日銀が長期国債を10兆円、市場から買い上げる
2) 日本の金融機関は長期国債のリスクを低減出来ると同時に10兆円を手に入れる
3) 日銀から株を買い上げる指示が出される
4) 日本の金融機関が株を買い上げ、株式相場が上昇する

5) 売り一色だった海外投資家が、日銀の量激緩和による株価上昇を予測。
6) ヘッジファンド勢が円売りドル買いで円相場を円安に振る
7) 円安で日本株を効率良く買う

海外勢は「円安で買い、円高で売る」を繰り返しています。
今回の日銀の発表は、明らかに決算対策であり、
日本の企業が「株安」では決算を乗り切れない証拠でもあります。

昨年の311の直後にも同様の動きがあり、
震災で株価が大きく下落した後に、
3月の後半にかけて大きく値を戻しています。
株が値を戻す要因は何もなかったのですが、
結局金融機関を中心に、海外勢力の売り圧力に対抗しました。

震災後、円高に振って日本株を売却して利益を出した海外勢は、
その後円安に誘導して、株を買戻し、
さらに決算相場のピークをにらんで円高誘導と日本株売却を仕掛けています。
海外勢力にとっては「泥棒に追い銭」状態で「濡れてに粟」だったでしょう。

今回も3月後半にかけて同様の状況が発生しており、
決算相場のピークを見極めた所で、
ヘッジファンドが円高を仕掛け、海外勢が日本株を売り始めるでしょう。

マスコミは3月決算に向けて政府・日銀と一体になって、
株式市場の復活をイメージ操作する必要があり、
その裏で、日本の国富がまたもや失われてゆくのです。

ニュースは結果しか報道せず、原因に触れる事はありません。
それを報道してしまったら、せっかくの株価操作が水の泡になってしまいます。



ギリシャ問題は先送りされただけ・・・だんだんとデフォルトに追い詰められていないか?

2012-02-22 05:56:00 | 分類なし


■ ギリシャ問題は解決したのか ■

ユーロ蔵相会議が長時間の協議の末にギリシャへの第二次支援を決定しました。
これによってギリシャの当座の危機は回避されます。

しかし、ギリシャが債務削減プログラムを誠実に実行しなければ、
直ぐに又、財政赤字が膨らみ始めます。

ギリシャに課せられた債務削減へのハードルは高く、
それは同時にギリシャ経済をさらに悪化させ、
税収を減らす要因にもなります。

債務削減によりギリシャ国民の生活が圧迫されるのは「これから」であり、
先日の様なデモが日常化する可能性も低くありません。
生活が厳しくなればばなる程、
ギリシャ国民は債務削減よりもむしろデフォルトとユーロ離脱を望むでしょう。

ギリシャは4月に選挙を控えており、
選挙の結果国民が「債務削減」を拒否する可能性もあり、
ドイツやオランダでは、第二次支援を総選挙後に伸ばす事も検討されていました。

ドイツではギリシャの選挙を延期すべきという
「ギリシャ国民の権利を制限しろ」と言うに等しい主張までされています。
民主主義の真の姿が見え隠れし始めました。

■ ユーロ首脳は当座の責務を果たしたと国民を説得するだろう ■

今回の第二次支援の決定により、
ギリシャがデフォルトを選択した場合にも、
ユーロ首脳達は、「最善の策を投じたにも関わらずギリシャが勝手にデフォルトした」
と言い訳が出来るようになりました。

ギリシャ議会は「集団行動条項(CAC)」の法案が21日に提出され
23日には可決される見込みです。
これにより、ギリシャは国債の債権放棄に強制力を持つ様になり、
これが発動された場合、「デフォルト」と同様の認定をされる可能性もあります。
その場合、クレジットイベントが発生する可能性はゼロでは無く、
CDS爆弾は脅しの道具として依然威力を温存する事になります。

■ ギリシャ問題は先送りされただけ ■

ロイターは今回のユーロ危機の混乱を助長する記事が多く、
楽観論を流した後に、悲観論を流すなど、
市場にあえてゆさぶりを掛けている様に思わせる節があります。

ギリシャの第二次支援の決定を速報して、
市場が上向くと報道した舌の根も乾かぬうちに次の様な記事を掲載しています。

「ギリシャ債務、再び軌道から外れる可能性大=トロイカ報告書」
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPTJE81K00D20120221

「ユーロ/ドル下げに転じる、ギリシャ支援合意後の値を消す」
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPTJE81K00820120221

何れにしても、市場はギリシャ問題に悲観的です。

EUやIMFが思い切った資金援助をギリシャに行わない限り、
ギリシャ問題は先送りされるだけで解決される事はありません。
そして、それこそがEU首脳の望む事だと思えてなりません。

とりあえず、市場が乱高下する事で大儲けする勢力が居る事は確かです。

日経平均もダウも上昇し、マスコミがこれを煽っています。
個人投資家がリスクを取り始めたと報道するマスコミは確信犯です。

必殺シリーズ・・・「命もらいます」

2012-02-21 14:57:00 | 時事/金融危機
 

■ 憂露組から足抜けさんざぁ出来ねえぜ・・・ ■

「憂露の旦那ぁ、頼みますぜぃ、もう少し返済額をさげちゃもらえませんかねぇ・・。」

「お前さん、借りた金はきっちり返すってのが、義理ってもんだろう。
 なんだい、あんたの名前にある義理たあ、そんな薄っぺらな義理なのかい。」
「なんでも、あんたの倅は、昼間っから女と出歩いているって噂じゃないか。
 先だっても、徒党を組んで大暴れして、高利貸しの店に火をつけたとか・・・。」
「そんな、世間様に迷惑かけといて、借金まけてくれたあ、百年早いんじゃないかい。」

「でも、旦那、このままじゃ、あっしもかみさんも、借金踏み倒して、
 夜逃げしなきゃなんねぃ・・」

「夜逃げだぁ。バカ言うんじゃないよ。
 憂露組を足抜け出来るとでも思ってんのかい。
 そんな事したら、お前は確実にそのに堀に浮かぶ事になるだろうよ。
 可哀そうに、かみさんも娘も女郎屋送りさ。」

「まあ、そこを何とか、だんな、あとちょっと金があればどうにか・・・」

「仕方ねぇなあ。これきりだよ。
 金貸し達には俺から良いように言っとくよ。
 そのかわり、この証文に判をついちゃくれないかい。」

一) 憂露組の借金は優先的に返済する
二) 高利貸しの借金は半分はきっちりと払う
三) 女房と子供もしっかり働く
四) 稼いだ金はまず返済

「旦那、分かりやした。
 これならどうにか借金が返せそうですぜ。」

「そうかい、俺もお前を見捨てたくはねえんだ。
 ただな、おれも姉さんの顔は立てなきゃなんねえ。
 姉さんさんにも立場ってもんがあるからな。」

■ お前さん、何無理な約束してんだよ ■ 

「お前さん、猿相手に何無理な約束してんだよ。」

「だて、お前、こうでもしなきゃ、俺は命がねえし、
 お前だった女郎屋行きだ。」

「あたしも子供達もやだからね。
 あくせく働いて、みんな組に持って行かれるなんざ、まっぴらだよ」

「でも、俺らがまっとうに働けば、返せねえことは無えだろ。」

「まっとうに働くって、うちの家系が一度でもまっとうに働いた事があったかね。
 あたしはやだよ。
 あたしゃ、こんな家出てくよ。
 子供たちだって、どうせ組に売られるくらいならあたしが連れていくよ」

「おい、お前らの稼ぎがたよりなんだよ・・・」

■ 「さあきっちり金は返してくれるかい」 ■

「どうだい、義理舎。金は用意出来たかい。」

「へえ、それが旦那、女房と子供らが出ってちまいました。
 とても俺一人の稼ぎじゃ・・・・」

「何だって、それじゃあ俺の面子が丸つぶれじゃねえか。
 ねえさんに何ていやいいんだよ。」

■ 「まあ、義理舎には可哀そうだけど・・・」 ■

「猿、どうだい義理舎は金を返してくれたかい?」

「へえ、それが姉さん、あいつ女房子供に愛想つかされやして・・。」

「まあそんな事たあ、先刻分かってるけどね・・・。
 それはそうと、片は付けたんだろうね。」

「へえ、きっちりと堀に浮かべときました。
 他の者たちの見せしめにはなるかと。」

「そうかい、裸天界隈の連中は金にだらしないからね。
 これでちったあ本気で働く気になるといいね。」

「ところで、姉さん、組のうるさ方の方はどうします。」

「そっちも義理舎を見たら金くらい出すだろう。
 そりゃあ、夜逃げされたら貸した金は、返ってこないからね。
 義理舎には可哀そうな事をしたけど、身からでた錆からね。」


その時、天井裏で聞き耳を立てる「岬の千蔵」の存在を二人は知る由も無い。