病院に急行するパトカーの後についてバイクを走らせていると、後の方から救急車のサイレンが追いついてくるように聞こえてきた。 グレンキャニオンの峡谷を見ている時が午後5時だったので、その時は午後7時くらいでしょうか。
サイレンの音って、精神衛生上、あまり良いものではありませんね。 不安をかきたてます。
バイクの速度をゆるめて道路の右側を走り、救急車をやり過ごしてから、またパトカーを追走して行きます。
アメリカでは、赤信号でも安全を見極めたら右折できるとか、踏切でも一旦停止はしなくても良いとかの独特な交通ルールがありますが、左折でも、道路のセンターに左折専用レーンが作られていて、ここは左折する車しか入れないようになっているんですね。
パトカーの後をついて、左折専用レーンで曲がり始めるタイミングを待ちます。もちろんパトカーは、そのまま曲がって行ったのですけどね。
ブランディングの町に入って、スーパーマーケットの建物の角を曲がると、病院が見えてきました。 ブルーマウンテン病院(BLUE MOUNTAIN HOSPITAL)の緊急棟の前に、救急車が停まっていて、すでにYoさんは緊急処置室に運ばれていました。
真っ赤な救急車は、どうしても消防車と間違えそうです。 テレビで放映されていたERは、いつも見ていたのだけれど、あの番組の中で出てくる救急車も真っ赤でしたっけ?
バイクを駐車場に駐めたら、とりあえず緊急病棟の待合室風の部屋で、医者の診断結果が出るまで待機するだけです。
待っている間に、サポートカーに積まれたバイクを見に行ってみると、あ、バイクのダメージは意外に小さい。
右のハンドルは折れて、シールドが割れて、左のエンジンガードが曲がっていますね。 あと、ヘッドライト類とシーシーバーの取り付け部分が壊れて、ぐらぐらになっている位だけど、鉄と人の体じゃ、投げ出された時のダメージを受ける程度が違いますからねぇ。
こちらの画像では、フロント部分のダメージの程度がよく判ります。フェンダーも曲がってます。
両側損傷って、どういった転倒の仕方をしたんだろう? 1回転したのか?
サポートカーに乗っていたMさんから事故の様子を聞いていると、怪しげな日本語をつかう若者が部屋に入ってきました。
どうやら、英語がうまく話せない私たちのために、近所の若者を通訳サポートとして、病院側が手配したらしいのだが。
でも、怪しげな日本語と、怪しげな英語では、ほとんど意志が通じなくて、何をいっているのか判らない。
怪我の程度も、病院側の対応も、何にも判らない。 いったい、彼はなんの役目を果たす為に、ここにいたのだろうか?と疑問に思うくらいでした。
あなたは、今(ここの病院で)何をしているのか?と聞くのだが、どうやら訊ね方が悪かったようで、「絵を描いている」とか、「○○の仕事をしている」とか、的はずれの答えしか戻ってこないので、最後は呆れて相手にするのをやめてしまいました。
What do you do Now?やWhat do you do here?とかの聴き方では、駄目なんだけど、判ってくれよ!みたいな所だったのだけれど。
あぁ、もっとまじめに英語の勉強をしておけば良かった。
こうなると頼りになるのは、現地サポートのKojiさんだけですねぇ。
事故が起きたのは、待ち合わせのガソリンスタンド手前、12.5マイル地点。 ゆるやかな登りのカーブで、両側が岩の壁になっている所みたいです。
病院でCTやレントゲンを撮って診断した結果、骨盤の複雑骨折と脚や肩は打撲と判りました。
ヘルメットの損傷がひどかったので、心配していたのだけど、頭には異常はないとの診断で一安心です。
この時点で、夜の9時を過ぎて、外はやっと真っ暗になってきました。
診断結果はでたのだけれど、この病院では手術が困難との事で、ヘリコプターでグランドキャニオンの南の街、フラッグスタッフの病院(Flagstaff Medical Center)まで移送する事になりました。
ラスベガスの病院なら、Kojiさんの所のスタッフも対応しやすかったので便利だったのですけどねぇ。
でも、途中に大きな病院があるので、それよりも遠くの病院に入院搬送すると、保険が適用されなくなるんだって。 仕方ないですね。
総費用は、救急車とヘリを呼部のだから、500万円を超えるくらいかな?と思っていたのだけど、救急医療やヘリ搬送にかかる諸費用は、5000万円を超えそうだと言います。
ひぇぇ、アメリカの医療費は高いんだよ!とは聞いていたけど、驚き。
旅行の前に、アメリカの医療費は半端無いので、「病気怪我の治療とそれに関わる費用については、無制限保証」という保険に全員入りましょうと決めて、保険に加入していたので助かりました。
パスポートや国際運転免許証、英語で書かれた保険証など、警察や病院で必要な書類を準備して、打ち合わせが終わった時はそろそろ10時になろうという時刻。
医者の診断結果が出るまでの間、近所の店が閉まってしまう9時までに、近くのスーパーマーケットから何か買ってきて食事を済ませることにしました。
今夜の予定では、アメリカのグルメ番組でも取り上げられたと言う、メキシカンハットのステーキハウスで、美味しいステーキを食べるようになっていたのだけどなぁ。
残念ながら、サンドイッチとコーヒー牛乳のようなドリンクという、寂しいディナーになってしまいました。 アメリカで、一番ひどい食事の夜でした。
牛乳が欲しかったのですが、棚にあるのは1ガロン入りのでっかいボトル。 Fさんが店員に聞いた所では、2~3マイル先の店に行けば売ってるよって事だったそうです。
恐るべし、アメリカ。 距離の概念が違いすぎ。
画像は、午後9時過ぎのもの。 さすがに10時になると、あたりは真っ暗になりますね。
ヘリコプターでの搬送まで見届けたかったのだけど、メキシカンハットのホテルのフロントは、午後11時には閉まってしまいます。
ルームキーをもらわないと、サソリやガラガラへびのいる野原で野宿? それは避けたい。
ガイドのKojiさんは、病院に残らないといけないようで、我々だけで50マイル(80km)先のホテルに向かう事になりました。
ホテルに着いたらフロントと交渉するのが私の役割?(他に英語をしゃべる人がいないので)ですが、なんだか、夜間走行も私がリーダーみたいになっています。 あれ?
ほんとに、全員、英語をしゃべれなかったのか? 実は一人くらい、話せることを隠していた奴は、いないだろうなぁ。
「ここからだと、大体1時間で着くはず」、「メキシカンハットに入ったら、右手にシェルのガソリンスタンドがあるので、その先の道路左側にホテルがある」という、ほんとうにアバウトな説明だけで、みんなを引き連れて走り出しましたよ。
はい、私が先導で。(汗)
ガソリンスタンドの前に、今夜行く予定だったステーキ店があるけど、たぶんもう営業は終わっていると思うって、そんな情報はいりません
目印のガソリンスタンドの、昼間の画像です。 真っ暗闇の中で見つける事ができるのか?
どうして?事故が?という感覚です。
道路も広いでしょうし、対向車も少ない!右と左を間違えても気が付けば元に戻れる・・・
すいません、勝手に考えてましたが。大変お疲れさまでした。
いくら保険に入っているとはいえ、外国で事故るのってどれだけ不安なものでしょうね。
幸いにお仲間がいるとはいえ、これで1人脱落ですか。
残りの人たちもツーリングを続けるのがきっと気が重いことだったでしょうね。
幸い、本人の意識がしっかりしていたのと、ドクターの診断では1週間で日本に送り返す可能性と、3ヶ月アメリカで治療にあたる可能性を示唆されました。
メンバーがこのようなことで脱落したりすると、やはり気は重いし、神経がささくれ立ってくるのでしょうか、ちょっとしたことでもイラッとするようになりました。 事故は、自分も痛い思いをするし、同行者にも大きな迷惑をかけることになりますねぇ。