モンテーニュ先生、最初は酒に酔っ払うことを不徳と批判しましたが、途中からは「たまには酔ってはめをはずすのもいいではないか」と、言っていることが逆になってきました。そもそもモンテーニュは「人間は多様性と矛盾に満ちたもの」と繰り返していますし、四角四面に割り切って考えるのが嫌いです。
確かに酒を飲むことは、ストレス解消には絶好だし、実に人生を楽しくする。一方で楽しすぎてはめをはずし、繰り返し恥ずかしい思いをしては後悔するし、ひどいときには恥ずかしいことをしたような気がしても思い出せなかったりするのである。これは実に困る。しかし私にとっては、酒はサイコー!に決まってるんですけどね。
酒はいいのか悪いのか、という議論を真面目に続けるかと思いきや、話は飲む酒の質の問題に移ってゆく。難しい好みや、やかましい選択などはやめろという。うまい酒ばっかり飲んでいたら、いやでも時おりまずい酒を飲む苦しみにあわなければならない。愉快な飲み手であるためには、そんな敏感な舌を持ってはならない。 え?
こんな酒が並んでいたら、生きててよかったと思うよねえ。
ドイツ人はどんな酒でも、ほとんど同じように喜んで飲む。彼らの目的は味わうことにはなくて、ただ酔っ払うために飲むのであり、そのほうがずっと安上がりだ。彼らの快楽はずっと豊富であり、しかもずっと手近にある。フランス人は二度の食事のときだけ、控え目に健康に気をつけて飲む。もっと時間をかけて、幅広いもっと強い飲み方に慣れるべきだ。快楽は我々が一生を通じて最も大事にしたく思うものであるから、それにはもっと多くの時間を捧げてしかるべきである。
「不徳」どころか、安い酒を一日中飲んでいろって言うわけですか?