子が教えてくれる人生。

　親は子供に責任がある。
　
　けれど親と子供は異なる存在であって、いつかそれぞれ自立をし、それぞれの生き方を模索していく。子供は親の所有物ではないのだから。
　それでも、子の痛みは確かに・・・いつまでも親の痛みであり、痛みを共有することは当然の愛情かもしれない。（もちろん感覚的なすれ違いがあり、必ずしも論点を同じくしないのは少々滑稽ですらあるけれど）

　つまり、どこまでも守れるものでもないということである。一体化して考えるのは愚、あるいは錯覚でさえある。
　子・・・彼はその存在を持って自覚し、彼の中の光を見つけていく。

　子のために何かをしてあげるというのは不遜であって、子の存在が親の眼を開かせてくれ、多くのものを与えてくれるというのが順当な考えに違いない。


　それは小さな子供に於いても同じであって、いたいけな幼児が保育園で親に別れを告げられ他人の中で一生懸命に順応しようとし、回りの子供たちや保育士などの大人との付き合い方を模索していく。それはあらゆる器官を刺激し、子の人間性を形成していく。

　たとえ幼児といえども、その観察眼は鋭い。物言わぬ観察者である。

　もちろん親に対しては最大の関心を持って、その動向を観察している。


　世代の連鎖・・・わたしたちは見つめられ、また見つめてもいる。

　親の背中を見て育ち、子の背中に教えられて人生の軌道を修正していく。

　子に教えられる人生に感謝したい。

『風の又三郎』１５８。

「何のやうだど。」一郎がききました。
「春日明神さんの帯のやうだ。」
「うな神さんの帯見だごとあるが」
「ぼく北海道で見たよ」

☆俊（ひいでている）、秘（奥深くて計り知れない）の妙（この上なく美しい、言い表せないほど優れている）ことを審/つまびらかにするための他意を言う。
　朴（ありのまま）に回り、導き現わし、化/形、性質を変えて別のものにする。

『城』６５４。

　フリーダは、顔をあげた。その眼は、涙がいっぱいだったが、愛の勝利をあらわす色は、どこにもなかった。

　顔/Gesicht→Gesetz/幻影、幽霊、掟。
　眼/Augen→Aufgang/出現。
　涙/Tranen→Traum/希望、夢。

☆フリーダ（平和、自由）は、幻想である。その出現は希望がいっぱいだったが、存在の勝利をあらわすものは何もなかった。