(あの人どうしている?)と思うことがある。
出かけた折、ひょっと目の前に現れたりして、(ああ、お元気だった)と胸をなでおろす。
わたしより更に高齢の彼女、最近はめったにお目にかかることがないけれど、手押し車を押し、ゆっくりゆっくり歩いている後姿を目にした。家の周りの散歩を日課にしているという。
教職を勤め上げた後は、忙しく趣味のサークルを幾つも掛け持ちし、どこにでも気軽に出かけていた彼女の、今は鈍重な歩き。
妹がね「元気な年長の方のお話をするの…悔しいわ」とこぼした。
人それぞれに与えられた宿命を生きる。
勝敗のレースではない、分かっていても自らの不具合に涙することもある。
与えられた時間を、それぞれみんな燃やして生きている。
歩けるだけを歩いていく!
『炎の帰還』
巨人の山高帽の男が街に出現し、一輪の薔薇を手に頬杖をつき彼方を眺めている。異様なほど巨きな男は街を足下に優雅にもどこかを見つめているが覆面のためもあり、特定できない視線である。
街を足下に…地球の上に跪いているということだろうか。地球から某所を見つめているという構図かもしれない。
炎、赤く燃え滾る情熱。
黄色の薔薇。黄色は光や太陽のイメージがあり、バラは女性や美に通じる。
帰還(Rekindled)は、再び新たなる情熱を燃やすということである。
雄々しくも地球(現世)に跪き、優雅なポーズで頬杖をつき、右手には薔薇(愛と優美)をもつ洒落男は地球外(冥府)を見ているのではないだろうか。
振り払っても振り払っても、募る思い。
素顔は見せらせない、この思いは人に覚られてはならない。大きく膨らむ哀惜、いつまで経っても消えない追慕。
屈折した思いをこの作品に託したのだと思う。
(写真は国立新美術館『マグリット』展・図録より)
風がどうと吹いてきて、草はざわざわ、木の葉はかさかさ、木はごとんごとん鳴りました。
「どうも腹が空いた。さつきから横つ腹が痛くてたまらないんだ。」
「ぼくもさうだ。もうあんまりあるきたくないな。」
☆普く推しはかる双(二つ)の記、要(かなめ)の記は冥(死者の世界))である。
複(二つ)の空(空間/景色)を追う。複(二つ)、Two(二つ)である。
そのさい、敬遠されたのは、わたしたちの一家ではなく、事件そのものだけであり、わたしたちにしても、事件の渦中にいたがために敬遠されただけのことです。
☆そのさい、敬遠されたのは、わたしたち一族ではなく、事件そのものだけでしたが、わたしたちも巻き込まれたために敬遠されてしまったのです。