『観光案内人』
硬質の金属を思わせる材質で擬人化されたピルボケ、口からは火を噴き、手には3個の集合住宅の模型を掲げている。背後の2体と共に肩にかけているローブ(ローマ皇帝の着用したトーガという説もあるらしい)は、その時代を表しているのかもしれない。
三人は同じ着衣・風体であることから同格とも思えるが、時代を制しているのは手前の男であり、手前の男が三つの集合住宅を掲げているのは背後の二人から勝ち取った領地(国の支配)かもしれない。
観光案内というのは、かつて(過去)の出来事(物語)の場所(名所・風物)を紹介することである。
全く違う方向を向く三人、つまりは意見の相違である戦闘を意味し、火(威力・権力)を噴き、三つの集合住宅(国家・領地・民衆)を手中に治めたのは、手前の男ということではないか。
世界中どこにでも繰り返し起こり得る戦火の勝利宣言と敗北。
水平線(平和・安穏)を望む広いテラスにおける、時空を超えた過去の歴史を語る場面なのだと解釈する。
『観光案内人』すなわち、過去の亡霊の擬人化である。
この現場が現在であるか、戦争の意味すら知らないずっと遠い未来の時空なのかは、定かにしていない。
(写真は国立新美術館『マグリット』展・図録より)
「こいつはどうだ、やつぱり世の中はうまくできてるねえ、けふ一日なんぎしたけれど、こんどはこんないゝこともある。このうちは料理店だけれどもたゞでご馳走するんだぜ。」
☆逝(人が死ぬこと)を注(書き記す)。
逸(隠れた)秘の霊(死者の魂)の裏(物事の内側)を展(ひろげる)。
置(すえたもの)は双(二つ)ある。
そういうわけで、わたしたちふたりは、そう、あなたおいまこうしているのとそっくりおなじ格好で、いっしょにすわりこんで、夜になったのも、ふたたび朝がめぐってきたのも忘れはてていました。
☆そういうわけで、わたしたちは今強制されているのとまったく同じようになり、死んでいるのか、未来にいるのか、思い出すことが出来ないのです。