悪くない置き忘れたらそれきりのビニール傘とぼくの関係
悪くない、悪いを否定、よくもない。極めて曖昧で不明な時空感が漂っている。見えないが、意識がそれを浮上させている。
置き忘れたらそれきりのビニール傘・・・放置された傘は僕とは無関係である。ビニール傘とぼくには所有の接点がない。しかし、心が動くことで、あたかも善悪の秤が微妙に動く。
ぼくには罪がなく、見ないで通り過ぎることは可能である。しかし、あの傘を見た小さな痛みはすでに生じてしまっている。
放置された傘の哀しみ? そんなものがあるだろうか。僕はそれを見たに過ぎない。ビニール傘と僕の距離はやがて遠ざかって行き、置き去りにされた傘の行方は知る由もない。
幾千と関わってきた風景のなかの接点は、近づきつつ遠のき永遠に忘れ去られてしまう。
《悪くない》、あらゆる事柄は行きずりのまま自分を肯定しつつ遠のいていくのかもしれない。切れ切れの現象である雲のように。