「夜中の2~3時ごろ、首が痛くて目が覚めたら、首が動かなくなっていて、
左右前後に動かすと、左首筋が痛む」
と急患で飛び込んで来た人がいた。
虹彩分析では、心臓心包の角度と消化器系の角度にマイナスサインがある。
最近は、急患を受け付ける時間がないので、お断りする場合が多いのですが、
この方は、6年ほど前から、ちょく、ちょくと(6 年間で15回)来られている
方で、当方と相性がいいと言うか、愛想がいいと言うか、いつもタイミング
よく治療に来ることができる。
脈診では、左の寸口、すなわち「火→心・小腸」が細脈で、他はいずれも虚脈
(血虚で傷暑)が出ているので、「暑邪」(熱さに負けたと考えてください)
が考えられた。
そんな時、五行の相剋から考えますと、水剋火で、腎経の勇泉か太谿で瀉する
のが理に叶うのだが、腎経の脈状も「実」ではないので、腎経を瀉しても、効果の
ない可能性が高い。
では、五行の基本的な流れで、肝経を補すればどうかということになるのですが、
経験的に肝経を補しても首の痛みまで取るのは難しく、脈状だけを整えて、自己
満足で終わりたくはない。
勿論、心だけを補するつもりで、「少衝」を補することも考えたが、少衝は
井穴なので、補するつもりが瀉になる場合があるので、それも使いたくない。
心の井木は、少衝
そこで、持論の七星論を用い、地(相火)を補することにしたのだが、地(相
火)の井木も中衝で井穴なので、これも補のつもりが瀉になる可能性があるの
で使いたくない。
そんな時、私はいつも原穴を使う。
原穴は、補にも瀉にも使えるので、実に便利だ。
心包経の原穴は「大陵」なので、大陵に刺鍼してみた。
首が左右に動くようになったので、他の患者さんとの時間の関係もあり、臓腑
調整をするために鍼をして置針した。
途中で、七星論による腹診をしたら、地(相火)の位置に違和感があった。
置針治療の後、首の付け根が左にずれていたので(座っている時はわからなか
った)、カイロでアジャストをしようと思ったが、前後の痛みが残っていて、
矯正する角度に首が捻れない。
操体法を試そうかとも思ったが、運動系を用いるよりも鍼灸のほうが患者さん
の負担にならないと思ったので、再び脈を診た。
ここでやっと、原因が浮いてきたようで、脾の脈状が少し実脈に変わってき
たので、これも七星論の相剋関係で取穴することにして、商丘で瀉した。
* 七星論と五行論の相剋関係は基本的に違います。
首が楽に動くようになったので、治療を終了したが、七星論による腹診でも、
地(相火)の位置の違和は取れていた。